第607回:AIとSEOの話題でありがちな「トラフィック量」基準での比較の問題点について
Episode Ep 607

第607回:AIとSEOの話題でありがちな「トラフィック量」基準での比較の問題点について

From Webコンサルタント中山陽平の「中小企業を強くするWebマーケティングラジオ」 ラウンドナップ・Webコンサルティング 代表 中山陽平

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ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。

AI対策とSEOの話、どっちの優先度が高いのか

AI対策(LLMOやGEOと呼ばれる)とSEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)の話、どっちの優先度が高いのか、さらに言えばやる意義があるのかについては、SNSなどでも熱量の高い議論にもなりがちです。

これについては様々な観点もありますし、データで分からないことも多いため、簡単に決められることではないと考えています。

ただ、この切り方はちょっと気になっている

ただ、時々見る「どちらからサイトへ来る人が多いか」という観点での比較、具体的には

  • AI経由のトラフィックは検索経由より遥かに少ない、Google経由の何十分の一しか無いんだ
  • AIツールのサイト自体のトラフィックは少ない、利用者なんてそんなものなんだからSEOをやっていればいいんだ

といったような、トラフィックベースで考えるのは、いろいろな麺で適切ではないと思っています。(そもそもアプリ経由が多いAIサイトのトラフィックを見てどうするんだというのもありますが)

トラフィックの大小は問題解決の総量とアラインしているのか?

本当に、Googleからの流入の方がずっと多い。それならSEOの勝ちで、AIはまだ気にしなくていいのでしょうか。私は、トラフィック量の大小だけで、購入や問い合わせへの貢献の優劣は決められないと考えています。

例えば分かりやすいところでは「AIで候補を絞ってから、Googleで検索してサイトへ来る人」もいます。と言うか今回のデータでもあげていますがかなり多い。

このアクセスは検索経由として記録されます。CVを生んだトラフィックは検索になります。

しかし、候補を選ぶ過程にはAIが関わっています。いわゆるマルチチャネルトラフィックです。

サイトへ来た経路と、来るまでに何が判断に影響したかは、分けて考える必要があるんですね。

AIが絡むと妙に熱量が上がる、特にSNS

実際これはWeb解析をしていれば常に考えることなのですが、AIが関わってくるとここが妙に捻じ曲げられて、いがち、と思います。悪く言えば「AIの価値を押し下げようとする」「”Googleを見ていればいい”というメッセージング」があると。

私自身はAIはChatGPT中心にずっとPROを使っていて、そして合わせて仕事としても個人としてもGoogleはAI Premiumプランを使いつつ、ということで、一応両方使っているつもりです。両方とも違う方向から、世の中の課題解決をするツールだと思っています。必要。

さておき、このあたりについてこんかいまとめたいなと。

ということで今回は、流入データと購入前の行動を見ながら、量だけの比較では何が抜け落ちるのかな?というところを考えてきます。

トラフィック量で分かること、分からないこと

Ahrefsの調査で見るGoogleとChatGPT

最初はAhrefsの「AI vs Search Traffic Analysis」です。Ahrefsは私も昔から使っているSEO系のツールで、日本法人ができる前からお世話になっています。2026年9月のデータでは、サイトへの流入量は、依然としてGoogleがChatGPTを大きく上回っています。

Ahrefsの2026年9月データから抜粋 流入元・分類 掲載割合 Google 23.96% 検索サイト全体 26.82% AIアシスタント全体 0.43% ChatGPT 0.34%

GoogleとChatGPTを比べると約70倍です。検索サイト全体に占めるGoogleの割合も約9割。検索、とりわけGoogleからの流入が大きいことは確かです。ただ、流入量の差を、そのままSEOとAIの価値の差として読むことはできません。この数字が示すのは、サイトへ来たときの経路だからです。

この調査の分析対象は115,254サイトです。ただし、検索サイトなどの参照元による分類と、Directなどのチャネル分類が重なっています。掲載された分類は、合計すれば100%になる内訳ではありません。ここでは、掲載条件のそろったGoogleとChatGPTの規模感を見ています。

参照:Ahrefs「AI vs Search Traffic Analysis」

2025年6月から2026年9月までの推移も掲載されています。ただし、月次推移の対象は固定した74,752サイトで、先ほどの分析対象全体とは異なります。

ある月の全体値と、固定した対象の推移を混ぜずに読む必要があります。検索の割合が下がったとしても、その分がそのままAIへ移ったとまでは言えません。

GA4で見えるAI経由の範囲

ここで気を付けたいのが、どこまでをAI経由として数えるかです。

GA4(には、2026年5月にAI Assistantというチャネルが加わりました。一方、GoogleのAI OverviewsやAI Modeからのクリックは、GA4ではOrganic Searchに含まれます。AIが関わったアクセスのすべてが、AI Assistantに入るわけではありません。

参照:Google Analyticsの更新情報/Google Analyticsのデフォルトチャネル定義

そもそも流入データが示すのは、サイトへ来たときの経路です。

その前にどこで情報を集め、何を信じ、どこまで候補を絞ったかは、それだけでは分かりません。AIからの直接流入が少ないことと、AIが購入判断に関わっていないことは別の話なんですね。

購入までの行動と流入経路

例1:私の買い物と旅行の調べ方

私も買い物ではChatGPTで調べてから、Googleで比較して買うことがあります。

旅行でも、まずAIに候補を挙げてもらい、その後は使い慣れたGoogleで検索して予約サイトへ行く。AIの回答にあるリンクから直接行くこともありますが、AIで調べた後に、検索を挟むことは普通にあります。

この場合、最後のアクセスだけを見れば検索経由です。でも、候補を知ったきっかけや、候補を絞る過程ではAIが関わっています。検索で来たお客さんだから、検索だけで意思決定したとは言えません。

例2:広告から検索へ進む行動

これはAIが登場して初めて起きた話ではありません。広告で商品を知り、名前を覚えておき、後から商品名で検索して申し込むこともありますよね。最後の検索だけに成果を結び付ければ、最初に興味を持ってもらった広告の役割を見落とします。

もちろん、アクセスの数字は必要です。ただ、サイトへ来る人が減ったとしても、来た人がよく理解して購入してくれるなら、商売としての結果は違います。流入量だけで、売上や問い合わせへの貢献までは判断できません。

アクセス解析で追える範囲には限界があります。BigQueryなどを使って分析を深めることはできても、お客さんの頭の中までは見えません。プライバシーへの配慮もあり、行動も複雑になっています。私は、数字から分かることと、分からないことを分ける必要があると感じています。

AIが推薦してくれた後に起きる行動

Similarwebが調べた推薦とサイト訪問の関係

Similarwebの「The Downstream Impact of AI Visibility」は、この話を考える手掛かりになります。対象は、米国のデスクトップ利用者の行動データです。金融、旅行、美容の分野でChatGPTに質問した人を追い、AIでブランドを推薦された後、7日以内にそのサイトを訪れたかを調べています。

分析対象は2025年7月から12月の数千の利用行動です。直前4週間にそのブランドのサイトを訪れていた人や、質問の時点でブランド名を挙げていた人は除かれています。調査では、推薦されたブランドのサイトを訪れる確率が平均2.5倍高かったと報告されています。

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