第566回:AI・デジタル活用を 浸透させる7つのポイントとは?『The Digital Culture Challenge』レポート紹介
この記事で分かること
- AI(人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが「社内に根付かない」理由が、ツールではなく文化・行動にあること
- 経営層・マネジメント層と現場の間に起きがちな「認識ギャップ」を、どう埋めていくかの考え方
- デジタル活用を浸透させるために押さえたい「7つのポイント」と、今日から始めやすい具体策
多くの組織はデジタル技術を導入しても、文化や行動、意識を変えない限り、変革は定着しません。
今回の話題:なぜAIやデジタル施策は社内に根付かないのか
AI系の取り組みや、少し前ならDXといった「デジタル化」を進めようとしても、なかなか会社に定着しないという悩みは本当に多いです。
これは日本だけの問題なのか、それともグローバルでも起きる共通課題なのか。そもそも会社の中で新しい変革をもたらすには、どこから探るべきなのか。そういう文脈で情報収集をしている中で、面白いレポートに出会ったので、今回はその内容をベースにお話しします。
参考にしたレポート:Capgeminiの「The Digital Culture Challenge」
今回ご紹介するのは、フランスのグローバル企業キャップジェミニ(Capgemini)が出している調査レポートです。AIそのものを扱った内容ではありませんが、「デジタル変革が定着しない理由」を文化の観点から整理していて、今のAI活用にもそのまま当てはまる話が多い。
スライドシェア(SlideShare)で公開されているので、気になる方は概要欄などから辿ってみてください。
The Digital Culture Challenge; Bridging the Employee-Leadership Disconnect(SlideShare)
ちなみに、レポート類は「「かたより」があるのでは」と気になる方もいると思います。もちろん営業的な意図がゼロとは言いませんが、私の感覚では極端に偏っているというより、デジタル変革の調査を継続的に出している企業として、参考にしやすい部類だと思っています。
最大の壁は「文化」:ツールが来たら変わる、では変わらない
結論をもう一度はっきり言うと、デジタル技術を導入しても、文化や行動・意識を変えない限り、変革は定着しません。
もう少し砕けて言うと、こんなすれ違いが起きやすいです。
- 経営者や役員側は「うちはデジタルに順応できている」と思っている
- 現場は「使いやすい状況になっていない」「仕組みがない」と感じている
- 結果として、部署間協力や新しいアイデアの実行が進まない
ここで大事なのは、「いい技術が来たら勝手に動く」ではなく、会社としての行動規範や許可範囲、方針を整えることです。企業理念のような抽象度の高い話だけでなく、もっと実際の現場に落ちる形で「ここまでは自由にやっていい」「AIはこういう方針で使う」といったルールを用意してあげることが効いてきます。
デジタル活用を浸透させる7つのポイント
レポートでは、デジタル文化を根付かせるための要素が7つ挙げられています。私はこれを「スローガン」ではなく、日々の仕事で繰り返す習慣として捉えるのが良いと思っています。
1. 顧客志向:まず「顧客が喜ぶ状態」から逆算する
デジタル文化を根付かせるには、「自分たちがどう変わるか」よりも先に、顧客としてどうなっていたら嬉しいのかを出発点にします。そこから逆算して「じゃあ自分たちはどう変わるべきか」を考える、という順番です。
2. イノベーション:新しい挑戦を後押しする空気があるか
新しいことをやろうとすると、どうしてもブレーキがかかります。事情も立場もあるので簡単な話ではないのですが、それでも「変わらないとついていけない」のは現実です。
特にAIの波は、昔のウェブサイト制作の立ち上がり期のように「1〜2年遅れても取り戻せる」とは限らない。だからこそ会社として「まず試してみよう」という空気を作ることが大事だと思っています。
3. データ駆動:分析より先に「言語化」が要る
データドリブンというと「解析しなきゃ」「データベースに入れなきゃ」と思われがちです。ただ、現場で一番の問題になるのは、個人の中にある知識や技術が形になっていないことです。
職人系の会社さんだと特に分かりやすいのですが、「なんとなくうまくいってる」「代々やってるから」という無意識の作業がたくさんあります。誰かに聞かれて初めて「そういえば、なぜだろう」と気づくことも多い。
だからまずやるべきは、暗黙知を意識の上に引き上げて、言語化して、他の人も使える形にすることです。作業を動画で撮って「なぜこの距離なのか」「なぜこのタイミングでひと手間を入れるのか」を一緒に解きほぐしていく。そういう地道な積み重ねが、結果的にナレッジになります。
ここまで集められれば、録音して文字起こししてAIに整理させるだけでも、十分に共有できる形にしていけます。
4. オープンさ:意見が言えない空気が一番つらい
意見を言った瞬間に否定される会社と、とりあえず受け止めて考える会社では、差が出ます。これは意識変革なので簡単に変わらないし、上の人の雰囲気で決まってしまう部分もあります。
だから順番としては、上の側からオープンマインドを作っていくのが大事です。年齢や経験に限らず、フラットに「そういう考え方・方向性もあるのか」と扱えるかどうかは、デジタルに限らず組織の強さに直結します。
それから、よくあるのが「意見を言うと、言った人が責任を持たされる」パターンです。これがあると、分かっていても言わなくなります。ここは文化として明言して、避ける必要があります。
5. 共同:部門間の壁を越えないと、結局動かない
営業、製造、サービス、カスタマーサポートなど、顧客接点のフェーズごとに持っている情報は違います。本来はそれを持ち寄った方が強いのに、部門ごとのKPIや目標設定が邪魔をすることがよくあります。
例えば会社としては「取るとトータルでマイナスになる顧客は取らない方がいい」ケースがあるのに、営業が件数だけで評価されていると、そういう案件を取ってきてしまう。これは個人の問題ではなく、制度設計の問題です。
6. デジタル思考:まず「楽にできないか」を考える
私自身も気をつけているのですが、2回3回やる作業は「一回目は面倒でも、仕組み化すれば二回目以降が楽になる」ことが多いです。それなのに、人は「今まで通り手を動かせば終わる」方を選びがちです。
AIでプログラムを書く話も似ています。SNSを見ていると、複雑なものが簡単にできているように見えますが、実際はできる人ができているだけです。業務を理解し、必要なものを具体的にイメージし、詳細に指示を出さないと、仕組み化は進みません。
だからこそ、「一回目で挫折しやすい」ことを前提に、少しずつ仕組み化を進められる文化を持っておくのが大事です。いきなり全部やると業務が止まりやすいので、段階的に進めるのが現実的です。
7. 機敏性:焦らず、でも止まらずに進める
この項目は少しアバウトに聞こえるかもしれませんが、変化に合わせて柔軟に動けるかどうか、という話です。焦って一気に変えると反動が来やすいし、一回失敗すると「もう二度とやらない」になりがちです。だから、きちんと進める設計が必要です。
「7つのポイント」を行動に変えるために、会社がやること
話を聞いていると「結局、評価制度なのかな」となりがちです。私は、そこはかなり本質を突いていると思います。分かりやすいし、効くからです。
私の感覚では、特に次の要素が重要です(いずれもレポートの趣旨と、現場感を重ねたものです)。
- トップが方針を示し、自分でも動く(ロールモデルになる)
- 現場の意見を取り入れ、ズレを埋める(ボトムアップの仕組みを持つ)
- 結果だけでなくプロセスも評価する(チャレンジしたか、協力したかを評価軸に入れる)
- 小さな実験を回す枠を作る(部署横断の「試す部門」や場を用意する)
- スキルアップに投資し、外部パートナーも活用する(学びによって見える景色が変わる)
特にプロセス評価は重要です。結果だけを求めると、人は萎縮します。新しいことは失敗がつきものなので、チャレンジそのものを評価に入れないと、動けなくなります。
中小企業こそ、今がチャンスだと思う理由
人が取れない、忙しい、大変。そういう状況だからこそ、文化の整備と仕組み化に取り組める余地があります。規模が小さい方が、変えやすい部分もあります。
「うちは無理だ」と思う方もいるかもしれません。でも、うまくいっている会社もスタート地点はゼロです。早く始められたか、偶然そういう人材がいたか、運の要素も正直あります。
だからこそ、他社が先に行っているかもしれないと考えつつ、できることから、ゆっくりでも進めていくのが良いと思っています。
今日からの最初の一歩
最後に、すぐ着手しやすいものを挙げます。焦って一発で変えようとせず、段階的に進める前提でどうぞ。
- ギャップ診断:経営層・マネジメント層・現場それぞれに、簡単なアンケートを取って「認識のズレ」を見える化する
- KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の見直し:部門最適になっていないか、プロセス評価が入っているかを点検する
- とりあえず小さく試す:一部の業務・一部のメンバーで「小さな成功」を積み上げる
- 暗黙知の言語化:動画・録音・文字起こしなどで、技能や判断の理由を整理して共有する
- 意見を言っても損しない空気づくり:「言った人が全部背負う」をなくし、まず受け止める
まとめ:技術ではなく、文化と行動が変革を定着させる
「このツールがあったらうちもできるのに」と言っているうちは、変わりません。デジタルは技術を入れれば終わりではなく、会社の中の文化、行動、意識をどう変えるかが重要です。
今回の7つのポイント(顧客志向、イノベーション、データ駆動、オープンさ、共同、デジタル思考、機敏性)を意識しつつ、できるところから進めていく。これが、結果的にデジタル活用やAI活用を自然に広げていく近道になると思います。
また、私のクライアントさんでも、こういう入り口から始めて、気がついたら自然にツールが使えるようになったり、「いい情報があったら試してみよう」と思えるようになったりするケースはたくさんあります。もし、Webサイトや広告だけの話ではなく、会社の土台(考え方や進め方)から整えていきたい場合は、お気軽にご相談ください。
この番組はバックナンバーも多く、質問フォームも用意しています。よければ他の回も聴いてみてください。
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