第605回:Google検索の将来に、中小企業はどう備える?顧客理解を今から積み上げる理由
Episode Ep 605 49 min 32s

第605回:Google検索の将来に、中小企業はどう備える?顧客理解を今から積み上げる理由

From Webコンサルタント中山陽平の「中小企業を強くするWebマーケティングラジオ」 ラウンドナップ・Webコンサルティング 代表 中山陽平

Podcastを今すぐここで聞く

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、Googleが目指しているものを踏まえて、企業は何を準備すればよいのかをお話しします。目先の検索対策も必要ですが、5年、10年という長い目で、今から積み上げるものを考えておきたいんですね。

GEO(Generative Engine Optimization:生成エンジン最適化)やLLMO(Large Language Model Optimization:大規模言語モデル最適化)など、新しい対策の話が次々に出てきます。短期的に効く施策を否定するつもりはありません。ただ、今のAI(Artificial Intelligence:人工知能)オーバービューやAIモードへの対応を続ければ、そのまま将来にも対応できるのか。現在の機能への最適化と、長期的な備えを分けて考える必要があると思っています。

検索結果が対話型AIになる、という理解だけで止まらない

私も現場で、Search Consoleの表示回数が大きく増える一方、CTR(Click Through Rate:クリック率)が大きく下がっていると感じます。「AIオーバービューのせいだ」という話もよく見かけます。ただ、以前もお話ししたように、数字をどう読むかは注意が必要です。目の前の変化だけを見て、Googleの方向まで決めつけない方がよいと感じています。

従来の青いリンクが並ぶ検索結果が、Geminiと会話する画面へ置き換わる。そういうイメージを持つ方も多いと思います。確かに見た目には分かりやすい変化ですが、Googleが長年解決しようとしている問題は、それだけではないんですね。

Googleは、多くの人にサービスを使ってもらい、広告を含めて事業を成り立たせています。Google Cloudのように少し事情の違う事業もありますが、検索では使ってもらえることが大前提です。Yahoo!のディレクトリ型検索やgooを使っていた頃から振り返ると、Googleは検索を便利にし続けてきました。私は、その流れを利用者が情報を探すときの負担を減らしてきた歴史として見ています。

検索は、実は難しい作業です。まず自分が知りたいことを整理し、検索する言葉を選び、うまく出てこなければ言葉を変える。そもそも何を知りたいのか、本人もうまく言語化できないことがあります。私たちもお客さんと話していて、本人がまだ言葉にできていない困り事に気づくことがありますよね。

私がセミナーでもよくお話しするのは、「探すこと自体は、別に楽しくないですよね」ということです。買う前にいくつもの会社や商品を比較するとしても、比較作業をしたくて始めたわけではありません。必要なものを見つけるまでの手間は、できれば少ない方がいい。Googleは、そこを減らそうとしているのだと思います。

毎日の順位変動を、長期方針の根拠にしない

毎日のように「順位が動いた」「今日は不安定だ」というニュースが出ます。毎日そう言っているなら、それを聞いて何を判断すればいいのか、と思うこともあります。Googleはさまざまなテストをしているので、短い期間の変化に合わせて、毎回方針を変えていたら振り回されます。

参照:Google:検索のテストと評価

短期施策は必要です。それでも、新しい対策を入れたらまた元に戻った、ということを繰り返していては、お金も時間もかかります。ニュースやセミナーで紹介された施策に対して、自社がそこへお金をかける価値はあるのかを、意思決定する方には考えていただきたいですね。

Googleの発表を、利用者の不便から読み直す

AIは、OpenAIが登場したところから始まったものではありません。Googleも以前から、言葉や画像などを理解する技術に取り組んできました。今の機能を最終形だと考えるより、昔から解決しようとしてきた問題の途中にあると見ると、捉え方が変わります。

BERTは、検索する言葉を選ぶ難しさに向き合っていた

2019年にGoogleが検索への導入を発表したBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)は、文中の言葉を前後の文脈から理解する技術です。その説明では、検索する人が適切な言葉を知っているとは限らず、検索の仕方そのものに迷うこともある、という問題が挙げられています。知らないことを調べたいのに、調べるための言葉を知っていなければならないわけです。

参照:Google:BERTによる検索の言語理解

これは、仕事でも実感します。私が初めて関わる業界について調べるとき、お客さんに「どの本を読んだらよいですか」と聞くことがあります。言葉を知らないと、自分で検索しても調べようがないんですよ。教えてもらった本を10冊ぐらい読んでから入ることもありました。最近は初めての業界に出会う機会も少なくなりましたが、今でもあります。

Googleの発表を読み返すと、人が検索エンジンに合わせて、不自然な単語の組み合わせを入力していること自体を問題にしているんですね。2019年から2026年まで、もう約7年です。それでも、人間側の検索の仕方が一気に変わったわけではありません。技術が変わることと、人の行動が変わることには時間差があります。

MUMは、何度も調べ直す負担を減らそうとしていた

2021年のMUM(Multitask Unified Model)の発表には、以前登った山とは別に、今度は富士山へ登りたいという例が出てきます。準備の違いを知るには、標高、気温、難しさ、必要な装備などを自分で分けて調べなければなりません。登山に詳しい人なら、一つ質問しただけで、その事情を踏まえて答えてくれるでしょう。人が質問を細かく分解して調べる負担を、検索側で引き受けようとしていたのだと思います。

当時のGoogleの説明では、こうした複雑な用事を済ませるために、平均8回の検索が行われていました。これを減らしたいという話です。今のAI検索に通じる問題意識が、2021年の時点ですでに示されていたんですね。

参照:Google:MUMの発表と登山の例

編集注:収録では、この時期を「AIはなかった」と表現していますが、MUM自体がAI技術です。ここでは、当時から現在のAI検索につながる課題に取り組んでいた、という話の流れを残し、この点を訂正しています。

Google レンズやマルチサーチは、言語化しなくても探せる入口

服の形や素材を見て「こういうものが欲しい」と思っても、うまく言葉にできないことがあります。Google レンズなら画像を使えるし、画像に「この色が欲しい」といった言葉を足すマルチサーチもあります。全部を文章や単語へ変換しなくても、知りたいことを伝えられる方向です。

参照:Google:画像と文字を組み合わせるマルチサーチ

自然で直感的な方法で、身の回りのものを理解する。Googleの説明には、そういう考え方が出てきます。キーワードをうまく選べる人だけが検索を使いこなせる状態から、その人が自然に伝えたことを理解できる状態へ近づけたいのだと私は受け取っています。

AIモードでは、検索の組み立ても任せられる

AIモードの「クエリ・ファンアウト」は、一つの質問を関連するテーマへ分け、複数の検索を行って情報を集める仕組みです。人が自分で検索語を変えながら調べていた部分を、裏側で行う。利用者の意図をくみ取って、必要な調査を組み立てるという流れですね。

参照:Google:AIモードとクエリ・ファンアウト

ここは、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)そのものが持っている機能と、混ぜない方がよいと思います。モデルを使って、どう検索を分解し、調べ、まとめるかというアプリケーション側の作りがあります。AIだから自然にそうなるのではなく、その目的に合わせて仕組みを作っているわけです。

さらに、詳しく調べたレポートを作るDeep Searchや、カメラで見せながら話せるSearch Liveのような方向もあります。調べるための手間を任せたり、自分が見ているものを相手にも見てもらったりする。私は、検索が、その場で相談に乗ってくれる相手に近づいていると感じます。

チケットを探すといった作業まで手伝う、エージェント的な機能も紹介されています。情報を見つけるだけでなく、その先の用事へ進んでいくわけです。利用者が目的を達成するまでの面倒を減らすという見方をすると、これらの動きはつながります。

参照:Google:Deep Search、Search Live、チケット探しを支援する機能の発表

編集注:上の機能は、Googleが2025年5月に紹介した内容を参照しています。発表内容と、収録時点での提供範囲は同じとは限りません。チケットの例も、選択肢の提示などを支援し、購入は利用者が選んだサイトで完了する説明です。原文の「チケットまで買ってくれる」を、無条件の自動購入とは扱っていません。

将来の姿は分からなくても、顧客理解は積み上げられる

ここからは、Googleが公表した計画ではなく、私自身の見方です。極端に言えば、頭の中のぼんやりしたものが、そのまま相手に伝わるような状態に近づきたいのではないでしょうか。私は「ニュータイプみたいなもの」と例えるのですが、もちろん文字どおりの話ではありません。言葉を整えなくても、知りたいことが通じる状態をイメージしています。

「あの時の、あれって何だったっけ」という言い方でも、その人の過去の情報や、その場で見聞きしているものを踏まえて分かってくれる。先回りして助けてくれることもあるかもしれません。技術だけでなく、社会がどこまで受け入れるかも関わりますから、実現する形は分かりません。今の入力欄や会話画面が、そのまま最終形だとは思わないということです。

企業向けでも、仕事の文脈を理解しようとする動きがあります。MicrosoftのWork IQのようなものですね。大企業では多くのデータを扱う仕組みや管理が必要ですが、小さな会社では、まず必要な情報を集めて共有するところからになると思います。相手の状況を理解するための情報が必要になるという点は、共通していると感じます。

参照:Microsoft:Work IQの概要

私はGoogleの内部にいるわけではありませんし、5年後の機能を知っているわけでもありません。そのうえで、企業側が備えるなら、お客さん自身よりも詳しいぐらいに、お客さんの知りたいことや気にしていることを理解する方向ではないかと思います。

AIに引用されやすくする施策や、FAQ(Frequently Asked Questions:よくある質問)を用意することも、短期的には必要でしょう。その先へ進むまで何年かかるか分かりませんから。ただ、それと並行して、お客さんのことを把握し、Googleが理解できる形で情報を出せるようにしておく。将来はWebページではなく、データベースのような形かもしれません。形が決まるのを待つより、元になる顧客理解をためておきたいんですね。

うちのような商売だと書いてあっても、「LLMOをやりませんか」という営業は来ます。サービスを売りたい側の都合や、頻繁な仕様変更だけを追っていては、どこかで行き詰まると思います。まずはGoogleの一次情報を、自分でも読んでみてください。私を含めて、誰かの説明を通せば、その人の見方が入ります。

顧客に近い中小企業の強みを、記録として残

Community discussion

No posts yet

Be the first to start the conversation about 第605回:Google検索の将来に、中小企業はどう備える?顧客理解を今から積み上げる理由