第335回:コロナ対処もWeb活用も「実際はリアルな人のつながりで動いていた」(経産省の委託調査報告書を読む)
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。
このPodcast/書き起こしで得られること(要点)
- コロナ禍で中小企業が実際に頼ったのは、Webの情報よりも人とのつながりだったことが分かります。
- 相談先や情報源は、平時のうちに信頼できる相手を増やしておくことが重要だと見えてきます。
- 地域課題への関わりは、単なる社会貢献ではなく、地域企業の経営基盤そのものにつながる可能性があります。
コロナ禍を振り返ると、売上の増減や自社の対応だけは分かっていても、他の会社がどう動いていたのかまでは見えにくいものです。今回の回では、経済産業省の委託調査報告書をもとに、その時期に中小企業が何を頼りにし、どう意思決定していたのかを整理しています。
そこで見えてくるのは、Web活用が叫ばれた時代であっても、最後に企業を動かしたのはかなりリアルな人のつながりだった、ということです。そして、その事実は「Webが役に立たない」という話ではなく、むしろ普段からどう信頼関係をつくっておくかが大事だという話につながっていきます。
数字で見るコロナ禍の厳しさ
まず押さえておきたいのは、当時の落ち込みが想像以上に大きかったことです。宿泊や観光のような分野が深刻だったのはもちろんですが、全体としても日本全体が沈んでいたと言っていいほどの状況でした。
一方で、家電や通販のように伸びた業種もありました。ただし、それも業界全体が爆発的に伸びたというより、一部が目立って見えていただけという考え方・方向性の方が近いようです。ネットでは「勝ち組と負け組がきれいに分かれた」ように見えがちですが、実際にはそこまで単純ではなく、多くの企業がしぼんでいたという感触が強く残ります。
こうした全体像を踏まえると、補助や支援策がなぜ必要だったのかも理解しやすくなります。自社の感覚だけで当時を思い出すより、全体データを一度通して見ることで、判断の前提が揃います。
頼りになったのは誰か
次に重要なのが、企業がどこに相談し、どこからの情報を実際の判断材料にしたのかです。この回では、経営者仲間や取引先、商工会議所のように、すでに信頼関係がある相手が強かったことが見えてきます。
逆に、一般に頼りになりそうな専門家や支援機関でも、「相談したけれど特に変化はなかった」と感じられている場面が少なくありませんでした。税理士や公認会計士、金融機関などは、本来かなり重要な相談先であるはずです。それでも満足度が伸びきらないのは、必要な時に先回りして助けてくれる存在になれていなかったからかもしれません。
これは利用する側にとっては、相談先を平時から増やしておく必要があるという示唆になりますし、支援する側にとっては、信頼される相談相手になれる余地がまだ大きいという話でもあります。
Webの情報は補助線でしかなかった
印象的なのは、SNSやWebサイトの情報が話題にはなっていても、最終的な意思決定ではそこまで強く使われていなかったことです。ここはWebに関わる立場からすると少し悔しいところですが、現実としてはそうだったのでしょう。
ただ、これはWebが無意味という意味ではありません。いきなり知らない発信を信じて大きな判断をする人は少ない、というだけです。つまり、発信内容より先に「この人なら信じられる」という関係性が必要だったわけです。
信頼できる情報源を平時に増やす
だからこそ大事なのは、有事のときに慌てて探すのではなく、平時から信頼できる人や会社を見つけておくことです。会ったことがなくても、この会社の発信は筋が通っている、この人の情報は「かたより」が少ない、という相手をストックしておく。それだけでも次に何か起きたときの行動の幅はかなり変わります。
コロナ禍では、多くの人が「どの情報を信じたらいいのか分からない」と感じたはずです。そのとき、結局頼ったのは既存の人脈でした。であれば、次に備える方法は単純で、普段から信頼できる情報源を増やしておくことです。Web活用の価値も、そこで初めて生きてきます。
地域課題への関わりが経営につながる
後半で語られている地域連携の話は、今回の回の中でも特に大事な示唆です。地域課題への取り組みは、建前としては地域貢献に見えやすいのですが、実際にはそれだけではありません。
まちづくり、地域資源の活用、労働力不足への対応、地元イベントや伝統行事への関与など、企業が地域に深く入っていくことで、自分たちが商売する土台そのものを守り、育てる動きになります。地元の市場価値を維持しようとする会社の方が、結果として強いのではないか。今回の回では、そうした仮説がかなり強く語られています。
しかもこれは、単に良いことをしているという話ではありません。地元でのプレゼンスが上がり、人づての信頼が積み上がり、新しい事業や商品開発にもつながる。ローカル企業にとっては、地域に関わること自体が経営戦略になりうる、という視点です。
まとめ:人のつながりを前提にWebと地域を見る
コロナ禍の総括として見えてくるのは、中小企業の意思決定は、思っている以上にリアルな人間関係の上で動いていたということです。相談先も情報源も、最後は信頼できる相手に収れんしていきました。
だから今やるべきことは二つです。ひとつは、平時から信頼できる情報源と相談相手を増やしておくこと。もうひとつは、地域の課題や人のつながりにきちんと関わり、自社がその地域で必要とされる存在になることです。
Web活用も地域連携も、結局は人との関係の上で効いてきます。その前提を外さずに考えることが、これからの中小企業にとっての現実的な打ち手ではないでしょうか。
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