第303回:Webマーケティングの用語を追う前に、背景とお客様を知る
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。
お客様と話したり、自分の本棚を見渡したりしていて、改めてお伝えしたいと思ったことがあります。Webやマーケティングには、いろいろな新しい名前の考え方が入ってきますよね。ただ、現場の感覚からいうと、その言葉を追いかけるだけでは、あまり役に立たないことが多いんです。
その考え方に携わっている方には申し訳ないのですが、なぜそう感じるのか。言葉の背後にあったものが、名前だけになると抜け落ちてしまう、というところを押さえていただきたいと思います。
同じ言葉でも、思い浮かべているものは違う
例えば、「赤い色鉛筆を取って」と言われたときに、自分が想像している赤と、相手が想像している赤は違うかもしれません。「今日のお客様は、とても反応が良かったです」という報告でも、自分の思う反応の良さと、報告した人の思う反応の良さは、全然違うことがあります。
言葉は物事を伝えることを優先するために、後ろにあるいろいろな情報を畳み込んでいるんですね。新しい用語も同じです。最初に考えた人は、背景の知識や思考があって、「こういう考え方をしたらいいのではないか。では、名前をどうしよう」と付けたはずです。
名前だけを受け取っても、その考え方が生まれた背景まで受け取れているとは限りません。いろいろな人を経由していくうちに、背景が抜けたり、違う解釈が加わったりします。
例えば「ブルーオーシャン戦略」という名前になった段階で、受け取る側にはそれぞれの理解が生まれます。その用語について本が出て、それをまねしても、うまくいかない。「本に書いてある戦略をやってみたけれど、うまくいきませんでした」というご相談でも、そういうことがあるんですね。
取り入れるなら、名前が付く前の背景までたどる
こうした考え方を使うなら、特にオリジナルに当たることです。何を背景に生まれて、もともと何を意図していたのか。原点にある一次情報を見て、それを基に自社に役立てることを考えないと、二次、三次と出回ってくる情報には、ゆがみがあると思った方がいいのではないでしょうか。
これは、悪意のある情報や嘘だけに気をつけようという話ではありません。善意で流されている情報でも、実際に効果があった情報でも、その背景まで自分たちに伝わるかというと、なかなか難しいんです。
「何かいいものはないか」と手法を探すときも、それが自社で使える条件まで分かっているかを考えてください。手法の部分だけを拾って実行しても、うまくいかないことがあります。
以前は、同じようにマーケティングに取り組む会社が少なく、裏の情報が分からなくても、手法をまねすれば成果が出ることがありました。でも、周りも同じように取り組んでいれば、そのやり方だけでは勝てなくなります。情報を拾ってきて実行するやり方で、以前ほどうまくいかなくなったという声を聞くのも、そういうことだと私は感じています。
数字を見る前の判断には、お客様の生の情報が要る
Webマーケティングというと、いろいろなことを数字で観測できるイメージがあるかもしれません。結果を定量的に評価できる数字が得られるのは事実ですし、意思決定の判断材料になるものを得られるのは、デジタルのありがたいところです。
ただ、それを実行するまでに何を考え、どう判断するかというところは、定性的に行われている部分が大きいと思っています。数字で結果が分かることと、何をすべきかが数字だけで決まることは、同じではないんですね。
お客様のことを肌感覚を持って知る機会を、きちんと持っておきたいと思います。店舗がある、あるいは直接お客様と接する機会があることは、大きな強みです。
私も、以前のお客様で、すでに契約が終わっている方に、ちょっとしたアドバイスをする代わりに、いろいろ教えていただくことがあります。現場の肌感覚や情報を失わないために、そういうことをかなりやっています。
新しい名前を覚え続けるより、お客様と接して得られる生の情報を社内で共有する。その上で「こういうことをしたらいいのではないか」と考えて、試していく。私は、そこに力をかけていただきたいんです。
お客様を知ってから手段を選び、反応を返してもらう
最近うまくいっている、あるいは、うまく回るだろうなと感じる会社は、まずお客様のことを理解して、その上でこういう手段を取ろうと考えています。結果として、この手法を選ぶという流れになっているんですね。
現場で得たことをホームページに反映して、その後のヒートマップの動きの変化などを見る。実際の接点から施策を考え、やってみて、反応を得る。動きの出発点を、ネット上で見つけた情報、特にSNSで流れてきた情報に置くと、うまくいかないことが多いと感じます。
実行した後も、アクセス解析を見て満足せず、お客様にどう受け取られたかを聞いてみてください。「こういうことをしたのですが、どうでしたか」「こう変えたのですが、どう思いますか」と、直接聞くこともできます。
私自身、SNSを情報源として次々に見て回ることは、あまりしていません。ネット上の情報をそのまま自分たちの施策に使うのは、難易度が高いと思うからです。その時間の代わりに、お客様から得た情報を共有して、施策を試して反応を返してもらうところを回していく方がいいと思っています。
名前が一人歩きしている考え方を使うなら、最初の原点に当たり、背景も含めて理解する。そして、自分たちのお客様から得られる定性的な情報とのつながりを、常に作っておく。用語を追いかけることが、自社のお客様を知ることの代わりにならないようにしていただければと思います。
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