テレワークは続けるべき?大事なのは他人の意見では無く、目の前の従業員との対話
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今日は、テレワークを続けるべきかどうかを「世間の空気」ではなく「目の前の従業員との対話」で決める、という話を整理します。
このPodcast/書き起こしで得られること(要点)
テレワークは、続ける・やめるのどちらが正しいというわけではありません。また、「流行っているから」でも「もう終わったから」でもなく、大切なのは、自社の状況と従業員の事情を見て、落としどころを作ることです。
- 強い見出しの記事やアンケートに振り回されず、情報の読み方を整えられます。
- 統計データを手がかりに、テレワークの実態を冷静に捉え直せます。
- 結局は労使の交渉で決まる、という現実的な進め方が分かります。
「テレワーク廃止で退職者が急増」という見出し…ただしい?
最近、「テレワークを廃止したら退職者が急増」「原則出社はもう無理」といった記事をいくつか見かけました。字面だけを見ると、テレワークをやめた会社が大変なことになっているように見えます。
ただ、本文まで読むと「どこかの会社の実データを積み上げた話」というより、相談事例に近い形で語られているものもあります。見出しの勢いで判断せず、文章の中身が何を根拠にしているのかを落ち着いて確認した方がいいです。
アンケートは便利だけれど、そのまま信じると判断が狂う
テレワークの継続希望を聞くアンケートで「7割が継続してほしい」といった話もよく見ます。もちろん、その声自体を否定する必要はありません。
一方で、アンケートは「答える人」と「答えない人」がいて、答える人は言いたいことがある人になりやすいです。特にネット調査は匿名で答えられることもあり、意見が尖って出やすい傾向があります。
加えて、調査の対象が偏っているケースもあります。たとえば「一戸建てに住んでいる家庭」に限定されているような調査では、住環境に余裕がある人の声になりやすいです。賃貸のコンパクトな住まいで仕事をしている人の感覚とは、前提が違ってきます。
統計で見ると、日本は「思ったよりテレワークしていない」
肌感覚だけで話すのは避けたいので、私は総務省統計局の令和4年(2022年)就業構造基本調査も確認しました。テレワークに関するデータは、該当箇所にまとまって掲載されています。
印象的だったのは、都道府県で差が大きいことです。特に大都市圏が高く、地方は数字が伸びにくい状況が見えてきます。
こうして眺めると、「日本はみんなテレワーク」という空気感ほど、実態は一様ではありません。だからこそ、他社や世間の論調をそのまま自社に当てはめると、判断を外しやすくなります。
テレワークは「優劣」ではなく「適性」
テレワークをしている会社が進んでいて、やらない会社が遅れている。そういう見られ方をすることがありますが、私はそうは思っていません。業種・職種・地域・仕事内容・チームの成熟度で、向き不向きがはっきり出ます。
私が現場を見ている限りでも、「そろそろテレワークがしんどい」という声は少なくありません。新人が同期と直接話したかった、管理職が対面の方が進めやすい、業務が遠隔だとやりづらいなど、理由は人と立場で変わります。
以前、テレワーク(リモートワーク)への考え方・方向性が二分されやすい背景についても別の回で話しています。合わせて整理したい方は、第207回:「テレワーク・モバイルワークへの考え方・方向性はなぜ2分してしまうのか」も参考になると思います。
採用時に「リモート前提」で結んだなら、まず契約書を確認する
記事を読んでいて、ここだけははっきり注意したい点があります。採用時に「リモート前提」で働いてもらう条件を示し、その前提で雇用契約を結んでいるケースです。
この場合、あとから「やっぱり出社してね」と切り替えると、揉めごとになりやすくなります。まずは雇用契約書や労働条件通知書など、書類を落ち着いて確認してください。
辞める人が出るのは、ある意味自然な流れ
通勤がない、オフィスの環境に縛られない、生活の組み立てがしやすい。そういう働き方に合ってしまった人が、元の形に戻れないのは不思議ではありません。
無理に引き留めるというより、会社として何を優先し、どこまで歩み寄れるかを決める話になります。人が抜けると困るなら、その困り方も含めて、条件設計と交渉の問題として扱うのが現実的です。
落としどころは「目の前の人の理由」を聞くところから始まる
テレワークを続けたい理由は、人によってまったく違います。ここを聞かずに、「世の中がそう言っている」「仕事とはそういうものだ」と大きな話にすると、いつまでも話が着地しません。
私は、労使の交渉として淡々と整理するのがいいと思っています。たとえば理由は、次のように分かれます。
- 通勤そのものが負担で、体力や時間がもたない
- オフィス環境が苦手で、集中しにくい
- 育児など家庭の事情があり、時間の調整が必要
理由が分かれば、完全リモートにこだわらず「出社頻度の調整」や「職種ごとの切り分け」など、現実的な選択肢が出てきます。ここを丁寧にやる方が、他の従業員への波及も抑えられます。
現場に行かないと掴めないことは、やはり残る
私自身、テレワークと現場を行き来する形で働いています。正直なところ、現場に行かないと分からないことは多いです。
知り合いでプログラムを書く仕事をしている方も、集中して手を動かす時間はリモートが合う一方で、「業務の中でどう使われているか」「どんな環境で動いているか」を掴むには、定期的に現場に行きたいと言っていました。遠隔と対面は、どちらか一方に寄せれば解決する話ではないのだと思います。
テレワークは悩むテーマではなく、決めるテーマ
「テレワークをやめたら大量に辞める」といった論調の記事は、これからも増えると思います。注目を集めやすいので、話題として回りやすいからです。
ただ、自社に必要なのは外の声ではなく、経営判断の材料と、従業員との対話です。テレワークができる・できないは優劣ではありません。適性として扱い、目の前の状況から落としどころを作っていきましょう。
関連リンク
- 統計局Webサイト/令和4年就業構造基本調査
- テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(厚生労働省)
- 労働条件通知書(モデル様式)(厚生労働省)
- 労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)(厚生労働省)
- 社労士を探す(全国社会保険労務士会連合会)
よくある質問
テレワークをやめると、本当に退職者は急増しますか? 一律には決まりません。テレワークに強く価値を感じている人もいれば、出社を望む人もいます。自社のメンバーの事情を聞いた上で、条件と運用を決めるのが現実的です。 ネットのアンケートで「継続希望が多数」と出ているのは、信じていいですか? 参考にはなりますが、そのまま自社に当てはめると危険です。回答者の「かたより」や対象属性の「かたより」が起きやすいので、「自社の判断材料」としては距離を置いて扱うのが安全です。 テレワークは「やっている会社の方が良い会社」なのでしょうか? そうは考えていません。テレワークの可否は優劣ではなく適性で、業種・職種・地域・チーム状況で最適解が変わります。 リモート前提で採用した人を、出社に切り替えても大丈夫ですか? まずは雇用契約書や労働条件通知書などの書類を確認してください。条件として明示している場合は、変更の進め方でトラブルになりやすいので、必要に応じて社労士に相談するのが安心です。 テレワークの希望が強い従業員とは、どう交渉すればいいですか? 「なぜテレワークが必要なのか」を理由から聞くのが出発点です。通勤、職場環境、家庭事情など理由が分かれば、出社頻度の調整など落としどころを作りやすくなります。※過去テレワークを扱ったPodcast(コロナスタート時)
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