第594回:AI検索が奪っているのは「アクセス数」だけではない、見込み客育成の変化・デメリットとは?
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ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。
このPodcast/書き起こしで得られること(要点)
- AI検索の影響は、単なるアクセス減ではなく「判断基準を提案する機会」
- コンテンツマーケティングにおける、比較・選び方・理解の場はWebサイト上では機能しなくなった
- 中小企業が今後前提に置くべき、サイト上の見込み客育成(ナーチャリング)の流れ
今回のテーマ:AI検索が奪っているのはなに?
AI検索が広がることで、企業から失われているのはどのプロセスか、という内容です。主としてコンテンツマーケティングの観点です。
「サイトへの流入が減る」「検索キーワードが見えにくくなる」「Google側のツールが対応しておらずブラックボックス状態」といった話。もちろんそれらもAI検索による影響として重要であり事実です。ただ、私が現場で「最も大きい」と感じているのは、そこではなく。
結論から言えば、AI検索が大きく変えているのは、ユーザーが「情報を探しながら、自分なりの判断基準を作っていく」プロセスです。
売り手側から見れば、見込み客育成・リードナーチャリングのためのファネルの入り口〜中盤の部分です。TOFUとかMOFUの部分。
ここをAIがごっそり持っていき始めている。
セールス・マーケティングの観点では、ここがかなり大きい変化だと考えています。
AI検索で奪われるのは、流入だけではない
長文検索やパーソナライズされやすい、と言う特徴はそこまで重要か?本当か?
AI検索の話になると、長文で検索できるようになるとか、パーソナライズされやすくなる、などそういう話題が出ます。
たしかにそれもあります。ただ、長い文章で検索する人は以前からいましたし、Googleでも以前から長い検索自体はできました(インターフェイス的にやりやすいかどうかはともかく)。
※仕様上は、2013年のハミングバード導入から、会話調や文章での検索に初期対応していた。10年以上前です。
パーソナライズについても、それに繋がるような情報を交えて検索する人はいないわけではないですが少ない。要するに、AIだからという理由でまとめられるほどのものではない(と感じます)。
AIだけではなくチャットボットのログなどを見ていても、長文を入れる人ってホントに一部です。
なので、私はそこが本質だとは思っていません。
では何が変わったのか
では何が変わったのか。昔の検索行動を思い出してみると分かりやすいです。
何かを調べるとき、人は最初から答えだけを探していたわけではありません。
情報そのものにたどり着く前に、
- どういう観点で見ればいいのか
- 何を基準に判断すればいいのか
- 自分の問いはそもそも何なのか
を探していました。
そして、調べながら理解を深めていく。検索しているうちに問いが変わっていく。
少しずつ情報を拾いながら、自分が本当に欲しいものへ近づいていく。そういう探索的な検索の流れがありました。
そしてAI検索は、この「どう調べればいいか」「何を基準に判断すればいいか」という探索的な検索の部分を代わりにやってくれます。
便利ではあります。体感で楽に感じるのは、ここじゃないでしょうか?考え方をアウトソーシングできる。
そういう意味ではインフルエンサーを信じる方向に近い便利さを提供していると言えます。AIは。
しかしそれは、企業側から見ると、ユーザーが自社サイトに来る前に、判断の土台が自社にとってアンコントローラブルな場所(AI)で作られてしまうということでもあります。
従来の検索体験では「選択にはいくつもの切り口がある」と自然に分かった
「○○ 比較」コンテンツが自然と提示していた物
昔から「何とか 比較」「何とか おすすめ」「何とか 選び方」という検索は多かったと思います。
月間検索数でも実際多いですし、それ故トピッククラスターモデルで計画を立てると、まず最初に埋めるべき対象になりがちです。そして、実際に需要はあったし、閲覧されることも多かったですね(それ故競争も激しかったですが)
従来の検索結果では、複数の記事が並びます。
- A社の記事では「こういう観点で考えるとよい」と書いてある。
- 別のレビューでは「このサービスを選ぶならこの基準が大事」と書いてある。
- 体験談や個人ブログが出てくることもある。
- 今であれば企業の「選び方」コンテンツが多いかもしれません。
それらを見ていると、ユーザーは無意識に気づきます。
「世の中にはいろいろな切り口がある。1つの基準で考えればいいわけではない」
「まず、どの基準で選ぶのかを自分で選ばなければいけない。」
このプロセスは面倒です。でも、情報探索においては非常に大事です。
複数の考え方に触れて、どれが自分たちに合うのかを拾っていく。その過程で、判断基準が自分の中に作られていきます。
AIが判断基準を丸めて提示することによる影響
AI検索になると、ユーザーからの景色が変わります。
Googleであろうと、ChatGPTであろうと、Claudeであろうと、検索する人から見ると全部
「AIが答えている」「AIがおすすめしている」という形
になります。
もちろん、AIの裏側にはさまざまな情報があり、AIそのものの意見ではないという説明はできます。
しかし、ユーザーから見た姿としては、詳しいAIさんが一つの回答としてまとめてくれているように見える。
AIに対して人格を感じるのは、人生相談などにAIを使うユーザーが非常に多いことからも明らかです。
ここが大きい、と思いませんか?
マーケティング側が失った物
今までは複数の人や企業の考え方が並んでいて、その中から自分たちが選ぶ必要がありました。
AI検索では、それが丸められて見えやすい。
いろいろな切り口があるはずなのに、最初から「こう考えるとよい」という形で提示される。
行動科学の観点で言えば、アンカリングに近いことが毎回起きます。
何を基準に判断すればいいのかを、先にAIが杭を打つように決めてしまう。
特に、その分野に慣れていない人や、これからAIネイティブに情報探索を始める人にとっては、それが考え方の基準になりやすい。
判断基準コンテンツが読まれにくくなる
マーケティング側から見たときに、ここで奪われるものは何か。それが「判断基準を作る場」です。
これまでは、企業サイトには「自社の強み」「選び方」「初めての方向け」「比較のポイント」といったコンテンツがありました。
ユーザーに考え方を知ってもらい、その考え方に納得してもらい、そのうえで自社のサービスのよさへつなげる。いわゆるナーチャリング、見込み客育成の王道の流れです。
ところが今、アクセス解析を見ていると、そうしたフロントエンド系のコンテンツが本当に読まれにくくなっていると感じます。過去に関わってきたサイトや診断してきたデータからの印象として、サービス詳細、会社概要、事例といった確認系のページへのアクセスに偏っている。
- 会社概要を見て問い合わせへ直行する。
- アクセスページを見て、ちゃんとオフィスがあることを確認して問い合わせる。
- 昔からのセッションを追っても、判断基準コンテンツを読んでいる形跡が見えにくい。
そういうケースが増えています。
なので、力を入れているコンテンツが、自社サイトにあるだけだと機能しないことがあると。いくらサイト内で誘導を増やしたり、バナー訴求しても反応しない。
自社サイトでコントロールできる範囲の縮小
これまでであれば、自社サイトに判断基準を書いておけば、少なくとも読まれる可能性がありました。検索順位で上に出る必要はありますが、それでも自分たちでコントロールできる範囲にありました。
しかし、今はAIにそれが持って行かれている。そして、AI側にその判断基準を反映させようとすると、難易度は一気に上がります。事実上非常に難しいでしょう。
AIの内部知識に影響させるには長い時間がかかるでしょうし、グラウンディングや検索連携の仕様も変わり続けています。GEOやLLMOのような言葉も出ていますが、現時点で「こうすれば確実」と言えるものはありません。
Googleだけでなく、ChatGPTやClaudeなど、サービスごとに出方も変わります。
今までのように、サイトに来てもらって、そこで強みを知ってもらい、判断基準を納得してもらうという流れだけに頼ると、かなり反応が取りづらくなります。見た目の数字に大きく変化がなくても、新規のお客さんが減っている場合には、この前提を疑った方がよいと感じています。
AI検索では判断基準が均質化しやすい
もう一つ大事なのは、AI検索によって判断基準はむしろ均質化しやすいのでは、という点。
AI検索というと、ユーザーごとにパーソナライズされ、より細かく個別化された商品やサービスが求められる、という話になりがちです。
ただ、判断基準そのものを見ると、多くのAI検索のおすすめの仕方はそこまで大きく変わらないと感じています。
いろいろな論点がある世界だったものが、「だいたいこういう感じでしょう」とまとめられていく。最大公約数というより、いろいろなものを盛り込んだ最小公倍数のような形に収まりやすい。
そうすると、ニッチな考え方や独自の切り口は、AI検索経由では扱いづらくなります。
ユーザーがわざわざ「他にはない独特な考え方を教えて」と聞くこともあるかもしれませんが、それがどれだけ多いかは…微妙かなと。
先に寄り添い、その後で違いを出す
では、独自性を捨てればよいのかというと、そうではありません。
ただし、最初から独自性だけを前面に出しても、AI検索の中では届きにくい。
まずは、AIがその業界について提示しやすい一般的な判断基準を把握する。その判断基準に沿ったうえで、比較対象として残る。その後で、自社の独自性や違いを伝える。いったん流れに沿っていく。
実はオリジナリティのあるサービスであっても、まずは特定の概念に自分たちを結びつけ、知ってもらい、その先で違いを知ってもらう。この順番でないと、そもそも相手に届かない可能性が高いと考えています。
人はAIに判断を預けやすくなる
自動化バイアスと認知負荷と認知的オフロード
AIの判断基準が受け入れられやすくなる背景には、性能だけではなく、人間側の事情もあります。
一つは、自動化バイアスです。コンピューターやシステムが出した提案を、人は正しい前提として扱いやすい。
もう一つは、情報量が多すぎることによる認知的負荷です。
人は面倒な判断を外に出したくなる。認知的オフロード、つまり考える負荷を外部に預ける動きが起きやすい。
失敗や判断責任をなるべく背負いたくないという傾向
さらに、私は最近の現場感として、失敗や判断責任をなるべく背負いたくないという傾向も強くなっていると感じています。
何かを選んで失敗したときに、「なぜそんな選択をしたのか」と責められる。
あるいは、自分自身で「あの選択をした自分が悪かった」と責めてしまう。今は、行動と人格がすぐに結びつけられやすい空気もあります。本来、何かを選んだことと、その人の人格はそこまで直結するものではないはずですが、現実にはそう見られる場面がある。
判断責任をAI側に負わせるという選択
そのとき、AIは判断を外に出す手段として非常に便利です。
「AIがそう言っていた」「Geminiに聞いたのに駄目だった」「GPTに聞いたけれど結局うまくいかなかった」という形で、AIには、判断責任を負わせやすい。
これはサービス品質への不満にも見えますが、私には、担いたくない失敗や責任をAIに託しているようにも見えます。これは印象論です。ただ、AIの精度が多少いまいちであっても、人があえてAIによって選択する流れは増えていくのではないかと考えています。
中小企業が見直すべき接点設計
AIというアンコントローラブルな存在が主導権を握る時代
今までは、道の途中にいろいろな人や企業がいました。「うちはこういう考え方です」「こういう基準で選ぶとよいです」と呼び込みをしていた。その声を聞きながら、ユーザーは自分の考え方を作っていました。
ところが今は、AIという道だけが非常に通りやすくなっている。ほかの道で呼び込みをしていても、その声が届きにくい。反響が落ちてきたときには、お客さんがもういない場所に向かって叫び続けていないかを見直す必要があります。
そのうえで、これからお客さんが通るAIという道の中で、どうやって自分たちの存在を知らせるのかを考える。そして同時に、AIに頼りきらない接点を作る必要があ
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