第506回:とにかく強いメッセージをぶつけてパワーで勝とうとするのは難しい
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。先週、某所でクローズドのセミナーを行ってきました。セミナーはフィードバックも得られますし、話している最中に自分で気づくことも多いので、毎回学びがあります。
今回はその中から、「いまの時代、これは前提として考えておいたほうがよいかもしれない」と感じた点をひとつ取り上げます。すぐに手順化できるハウツーというより、考え方の整理に近い内容なので、流しで聞くような感覚で読んでいただけると嬉しいです。
このPodcast/書き起こしで得られること(要点)
強いメッセージやキャンペーンを打っても反応が取りにくいとき、どこでつまずいている可能性が高いのかが分かります。セールスファネル(認知→興味→比較→成約の流れ)の手前で起きている変化を踏まえ、まず何を点検し、どこから整えていくかの視点を持ち帰れます。
- 「伝える前に越えるべき関門」が増えた、という感覚の正体
- 強いメッセージより先に必要になってきた「信じてもらえる状態」
- 会社概要・事例・お客様の声が先に見られる流れへの向き合い方
- 自社の情報が“ミュート”されていないか確かめるための考え方
強いメッセージで押し切る前に、越えるべき関門が増えました
最近、「昔のように売れなくなった」という話を聞く一方で、「昔よりも選ばれるようになった」という話もよく耳にします。何が違うのかを考えると、ひとつの要因だけで説明できるものではないにせよ、マーケティング上で最初に越えるべきものが増えたように感じています。
以前は、認知してもらいさえすれば、あとはセールスファネルの中を一定の割合で進んでいく、という捉え方をしやすかったと思います。ところが今は、入り口のさらに手前に「聞く気になるかどうか」「疑わずに読めるかどうか」という段階があり、そこが越えられないと、その後にどれだけ良いことを書いても届きにくい、そんな感覚があります。
情報が増えた結果、「何を信じるか」より「誰を信じるか」になりやすい
情報量が増えたことに加えて、情報に対して解釈を加える人が増えました。コロナ禍やフェイク系のニュースなどを経て、「言いたくなる」という人間の性質が強く出やすくなった面もあると思います。
すると、読み手は「内容が正しいか」だけでなく、「この人の話をどの程度受け取ってよいのか」を強く意識します。GoogleのE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)という話も、突き詰めると「信じられる情報か」だけでなく、「信じられると感じられるか」が問われる、ということだと私は理解しています。関連する考え方として、こちらのドキュメントも参考になります。Google Search Central|Creating Helpful, Reliable, People-First Content
「メッセージが強い」より先に、「話を聞いてもらえる状態」をつくる
私がセミナーでよくお伝えしているのは、「心を開いてもらえない限り、どんな良い商品でも、どんな良いメッセージでも届きにくい」という点です。言い換えると、ファネルに入る前に、少なくとも半分くらいは聞く姿勢になってもらう必要がある、ということです。
この前提を見落とすと、マーケティングの仕組みをいくら整えても、前に進まないことがあります。特に、キャンペーンの魅力や、違いの訴求、コンテンツ量でこれまで取れていたところほど、ここ数年で手応えが変わったと感じやすいのではないでしょうか。
行動の変化は、数字にも出ています
お客様からのフィードバックでも感じますし、ヒートマップやクリック、マウストラッキングのツールを見ていても、以前よりキャッチ周りへの反応が弱いと感じることがあります。昔はセールスメッセージのページを多く見られていたのに、いまは「最初にそこへ行く」とは限らなくなっています。
代わりに何を見られるかというと、法人であれば特に、会社概要が先に見られやすい印象があります。次に、お客様の声や事例など、第三者的な裏づけになるコンテンツを見て、そこで離脱する人も一定数いて、それでも先に進む人がサービスを見に行く、という流れです。
これはもともとBtoBでは自然な動きでした。担当者は「最高のもの」を探すというより、「失敗しない」ことを重視しやすいので、安心材料を先に集める傾向があるからです。いまはこの流れが、BtoCでも(金額が高めのものほど)広がってきているように感じます。
まず確認したいのは、情報が届いているかではなく「受け取られているか」です
ウェブに書いてあるから読んでもらえる、ということはありません。ヘッダーに書いてあっても、トップページに書いてあっても、「読む」ことと、「納得しながら受け取る」ことは別の問題です。
日々、ニュースや雑誌、ウェブメディアを見ていても、私たちは当たり前のようにスルーしたり、シャットダウンしたり、ミュートしたりしています。情報が多いほどミュートは重要な機能になりますが、同じことが自社のコンテンツにも起きていないか、ここを点検していただきたいのです。
「ミュートされているか」は、ツールより会話から見えてくることがあります
では、どうやってミュート状態を確かめるのかというと、「これさえ見れば分かる」という単純なチェック項目は作りにくいと思います。むしろ、お客様と接する中で、さりげなく聞いていくほうが答えに近づきやすい感覚があります。
たとえば「最初はどう思いましたか」「どのあたりで迷いましたか」といった問いかけを、まだ関心が固まりきっていない見込み客も含めて拾っていくと、次に直すべき点が見えてきます。安易な近道を探すより、相手の反応を材料に整える、という姿勢が大切だと思っています。
タイパを追いすぎた結果、言葉の順番が置き去りになることがあります
ここ10年ほど、私たちは効率化やハウツーに頼りやすかったと思います。タイパ(タイムパフォーマンス)を理由に、最短で答えに近づきたい気持ちが強くなるほど、「考える工程」が薄くなることがあります。
ただ、いま求められるのは、まず発するべき言葉は何か、どんな順番なら聞いてもらえるのか、という設計です。トップページに並ぶ文章も、本来は「お客様に話したときに、話を聞いてもらえる順番」に近づけたほうがよい、というのが私の考えです。
反応が落ちたときは「強みを強く言う」より先に、信頼の入口を見直す
もし最近、反応が取りにくくなったと感じるなら、「そもそも最初のフィルターを越えられていない」可能性があります。強いキャンペーンや、強みの打ち出しで取ってきたところほど、いまはその効果が急に弱く感じられることがあるかもしれません。
逆に言えば、信じてもらえれば、失敗しにくいと感じてもらえれば、多少条件が悪くても成約することがあります。だからこそ、まず「信頼してもらえる状態」を作れているかを、身内だけで判断せず、いろいろな人の声から確かめていくのがよいと思います。
一つの練習として「自分が選ぶとき」を観察してみる
もしトレーニングとして何か一つできることがあるとすれば、まったく別の業界の商品やサービスを選ぶときに、自分が何を気にしているかを観察することです。できれば5〜6人の複数人で、意見を出し合ってみると、思っている以上に気づきがあります。
自分の業界のことは見えにくいのに、一消費者になると見えることがたくさんあります。私は購買行動をするとき、ひとりでも口に出して確認したり、メモを取りながら見たりすることがありますが、言語化すると抽象的な不安が具体的な論点に落ちてくるので、整理が進みやすいと感じます。
まとめ
いまは、強いメッセージをぶつける前に、「話を聞いてもらえる状態」を作ることが、より重要になってきたように思います。セールスファネルに入る前の信頼の関門を越えられないと、どれだけ良いことを書いても、相手に届きにくいからです。
まずは自社のコンテンツがミュートされていないかを確かめ、会社概要や第三者的な裏づけを含めて、信頼の入口を整えるところから始めてみてください。そのうえで、リアルで得た反応をウェブに還元しながら、言葉の順番を少しずつ組み替えていくと、軌道修正がしやすくなるはずです。
関連リンク
- Google Search Central|Creating Helpful, Reliable, People-First Content
- Google Search Central Blog|E-E-A-T(Experienceの追加)
- Google|Search Quality Evaluator Guidelines(PDF)
- Microsoft Clarity(公式)
- Hotjar(公式)
よくある質問(FAQ)
強いメッセージを出しているのに、反応が落ちたのはなぜですか? メッセージの強さ以前に、「まず信じてよい相手か」を見られる場面が増えた可能性があります。ファネルに入る前の段階で、読まれずに素通りされていると、良い内容でも届きにくくなります。 「ミュートされているかどうか」は、どう確かめればよいですか? ツールだけで結論を出すのは難しいので、会話の中で反応を拾うのがおすすめです。「最初はどう思ったか」「どこで迷ったか」を静かに聞いていくと、入口で何が止めているかが見えてきます。 会社概要や事例が先に見られるのは、良いことなのでしょうか? いまの環境では自然な動きだと思います。特に法人では失敗を避けたい心理が強いので、まず安心材料を集める傾向があります。そこに対応した情報が整っていると、次の検討に進みやすくなります。 トップページの文章は、どんな順番で並べるべきですか? 「お客様に実際に会ったとき、どんな順番なら話を聞いてもらえるか」を基準に考えるのがよいと思います。読む人が次の段落へ進みやすい流れになっているかを、現場の反応から見直していくのが現実的です。 すぐできる練習はありますか? 別業界のサービスを選ぶときに、自分が何を気にして判断しているかを観察してみてください。口に出して言語化したり、メモを取りながら整理したりすると、判断の軸が見えやすくなります。配信スタンド
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