第564回:SEO業界の「提供価値」と「収益の柱」はどんどん変わっている…?
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、SEO(検索エンジン最適化)業界の「何で儲けているのか」、売上の作り方がどう変わってきているのかを、現場の肌感覚ベースで整理します。
この記事で得られること(要点)を先にまとめます。以下の4点です。
- SEO業界の「売上の柱」が、今どう組み替わっているかの全体像
- テクニカルSEOやコンテンツSEOだけでは継続売上が作りにくい理由
- ローカルSEO(MEO)やAI対応、人材・教育(ツール/研修)へシフトしている構造
- 外部に依頼するときに、最低限確認しておきたいポイント
結論から言うと、SEO業界は「ストレートなSEO施策を回すだけ」で食べている会社が、体感として相当少なくなっていると思っています。コンテンツ制作やローカルSEO(MEO)、AI対応など“今響きそうなもの”を売りつつ、人材や教育(ツール/研修)など複数の柱を持って利益構造を分散させている会社が増えています。
なお、ここで話す内容は、上場している会社が多い世界でもなく、外部にBSなどの情報が十分に出ている領域でもありません。あくまで私のネットワーク内での情報や、お客さんに出されてくる提案資料を見ての「現場からの肌感覚」として捉えてください。
SEO業界の売上構成は、どう変わってきたのか
「SEO業界は何で売上を立てているのか」と聞くと、多くの方は「SEOのお手伝いをして成果を上げる部分」だと考えると思います。昔はそれで効果が出ましたし、テクニカルな施策で成果が出せた時期も長くありました。
一方で、2014年前後に「コンテンツマーケティング」という言葉が日本でも広まり、インバウンドマーケティングのような“待ち受けて育てていく”考え方が普及していきます。その流れの中で、コンテンツに「SEO」という言葉がくっついて「コンテンツSEO」という形で売られるようになり、テクニカルが通用しにくくなってきた分を、コンテンツ制作が補う構図が長く続きました。
ただ、私の感覚だと、今は「テクニカル+コンテンツ」だけでは、正直もう食えない状態に近いです。ここが今回の話の核心です。
テクニカルSEOは“スポット仕事”としては残るが、月次は成立しにくい
テクニカルの仕事がゼロになったわけではありません。サイト全体の診断(オーディット)や、大規模サイトのメンテナンスのような業務は、四半期に1回、あるいは年1回といったスパンでも需要があり、単価もそれなりにつきます。
ただし「毎月、テクニカルにチューニングして順位を上げ続ける」形の継続業務は、成立しにくくなっています。やることが限られてきますし、提案しても現場が動かないことがボトルネックになりがちです。
さらに、オーディットのような作業もAI(人工知能)で楽になってきた実感があり、単価はもっと下げてもいい、敷居を下げてもいいと感じる場面も増えました。こうなると、テクニカルだけで継続売上を作るのは難しくなっていきます。
コンテンツSEOは“売りやすい”が、単価も成果も厳しくなっている
コンテンツ制作は、成果物(記事など)ができるので売りやすい領域です。だからこそ長くSEO施策の中心にありました。ただ、昔ながらの「サジェスト網羅で量産する」ような作り方は、今は本当に効果が出にくいと感じています。
Search Console(サーチコンソール)で見ても流入がない、というケースは多いですし、サイト全体のトピッククラスターの観点でも評価(Googleからの評価)が押し上がっているかというと、変わっていないように見えることもあります。ここにお金を払っている側も気づき始めていて、「月10万、20万払っているけど意味がない」と感じる流れが出てきています。
その結果、提案でコンテンツを持ってくる会社のページ単価が下がり続けています。高い値段では売れなくなってきた、ということだと思います。
では、どこにシフトしているのか(肌感覚の整理)
ここからは「こうしましょう」というより、状況の共有です。特定の企業を名指しするつもりもありませんし、下品なことはしたくないのでしません。
ローカルSEO(MEO)に流れている
ローカルSEO(MEO)は、造語的に使われることも多いですし、悪い話が多い領域でもあり、実際に悪い業者もすごく多いと思っています。ただ、それに混じりながらも「サイト上のSEOが通じにくいなら、Googleマップでどうするか」を売る営業は増えている印象です。
一方で私は、ローカルSEO(MEO)を「お金を取って単体でバンバンやるもの」としては、あまり成立しにくいと見ています。結局、サイトの改善になってきますし、情報を100%にしたところで伸びるとは限りません。そうすると、嫌でも「口コミを集めよう」に寄っていきがちですが、本当はサービスの改善や商品の改良の話に戻ってきます。
つまり、もはやSEOだけの話じゃないよね、というところに着地しやすい。ここは、依頼する側が構造として知っておくと損がないポイントだと思います。
AI対応を掲げた提案が増えている
AI対応を謳って「こういうものにしましょう」「既存のサイトを回収(改修)しましょう」という提案も増えているように感じます。日本にも導入されていないものを含め、海外でもGoogleが試行錯誤している段階で、先が見えにくい部分はあります。
ただ、今からやっておいて損はない、という意味では需要が生まれやすい領域でもあります。だからこそ、提案する側も応じる側も増えているのだと思います。
人材(マッチング/派遣)が太い柱になっている
もう一つ大きいのが人材系です。人材マッチングや、間に入って担当者を送り込む、フリーランスと企業を結びつけて手数料を取るモデルは、ウェブマーケティング系の会社全般で、前から種まきをしてきた会社が多いです。
品質はサービスと担当者次第で一概に良し悪しは言えませんが、売上としてインパクトがある会社が増えているのは事実だと思います。ニーズがあるから商売として成立している、という考え方・方向性です。
教育(エデュケーション)/ツール販売が伸びやすい
さらに増えているのが教育系です。SEO会社だけでなく、制作会社やSEOが分からない代理店、地域の元請けのような立場に対して、SEO系ツールやコンテンツ系ツールを売る、いわば“ツルハシを売る”モデルです。
海外のツールだと特に、トレーニングコースの案内や、最初にどう始めるかのミーティング設定がセットで入ってくることが多いです。うまくやっているところほど、そのツールを使う前提でのSEOの考え方や学習コンテンツが充実しています。
そして、ここにAIを絡めると作りやすくなるので、今後ここをやろうとする会社は増えると思います。加えて、対人の営業や個別サポートが苦手な会社はどうしても多いので、ツール販売や教育はハマりやすい構造だと感じています。
依頼する側が、必ず確認しておきたいこと
SEO業界は、皆さんが思っているような「SEO施策を回して成果を出すだけ」で食っている会社が、相当少なくなっていると思います。いろいろな形で売りながら柱を作り、利益構造を分散している会社が増えている状況です。
だからこそ、お願いするときは「自分が頼みたい分野に関して、その会社が今どれくらい上手なのか」を必ず確認した方がいいです。正直、会社の看板と、実際に強い領域がズレていることは起きます。
特に規模感のある会社だと、人材系とツール/教育で整形を立てているところも多いので、もし自分が「いわゆるSEO」を頼みたいなら、その領域の体制や実績、誰がどこまでやるのかはちゃんと聞いた方がいいと思います。
手数料の話(人材系)
人材系は、うまくハマれば儲かる構造です。手数料は会社によってかなり違いますし、あまりに高いところはどうかなと思うこともあります。
ただ、マッチングは手数が多いですし、保険も含めて“ほどまり良く”しなければいけない事情もあるので、分かる部分もあります。少なくとも「何に対していくら払うのか」は曖昧にせず、納得できる形にした方がいいです。
また、「某動画教材サイト」みたいに、手数料が高い構造が当たり前になっている世界もありますよね。恐ろしいのはその高さであって、仕組みとしては成立しているからこそ、余計に判断が鈍りやすいという話です。
余談:AIモードを巡る業界の温度感と、ゼロクリックの話
ここからは余談のさらに余談です。AIモードがいつ来るのか、どんな見せ方が主流になるのかでドキドキしている人は多いと思いますが、一番ドキドキしているのはこの業界の人々だと思います。
すでにAIモードが入ってきて、それ以外にもいろんな見せ方がテストされている中で、怒っているウェブマスターやSEO会社の人も多い。争いが絶えない状況になってきている、というのは体感としてあります。
日本ほど雑な戦いは、リベートに慣れた国はやらない、という考え方・方向性もありますが、なかなかこのあたりは燃えそうというか、PVが稼げそうなネタに乗っかっちゃっているような状況もある。ある意味、コンテンツマーケティングの敗北と言えるのかもしれません。
ゼロクリックサーチが増えて、広告に関してはGoogle側がいろいろ調整をかけてくれるし、売上の軸でもあります。速攻性があるからテストもできるし、実際どうなるかのPDCA(Plan-Do-Check-Act)も高速に回せるので、短期でプラスが出やすい面はあると思います。
SEOは「手段」。主従関係を間違えると事故になる
SEOに関して言うと、単体で考えちゃダメだと思っています。SEOは手段でしかない、という前提に立ってください。
会社として、どうやったら自分たちのターゲットエリアの人たちに存在を築いてもらって、ブランドを作っていくのか。そこはSEOでやることではなく、もっとオフラインも含めて会社全体としてやっていって、デジタル/Webの分野でうまくやっていく。その中の手段の1つとしてSEOがあります。
この主従関係を間違えると結構大事故になるので、ここは気をつけましょう、という話です。
SEO専門会社ではなく「右腕」として伴走しています
最後に、うちの立ち位置も補足します。うちはSEOの専門会社ではありません。
端的に言えば、中小企業さん・小規模企業さんで「Webをなかなか活用できない」「やろうと思ったけど失敗してしまって次は失敗したくない」「どこから直したらいいか分からない」というところに寄り添いながら、伴走して右腕になって、計画を立て、戦略を立て、作戦を立てて一緒にやっていく。ノウハウを貯めながら、はみ出るところはワンストップで作業代行する、という仕事をしています。
とはいえ、広告はまだペイする状況にないことも多いので、まずは検索エンジンからアクセスを集められるようにしながら、Webサイト(Webサイト)を良くしていく、という流れが多い。結果としてSEOのノウハウや話題が増えてしまう、という状況はあります。個人的に好き、というのもあります。
お客さんの興味関心も「どうやったら検索順位を上げられますか」「どうやったらアクセスを集められますか」より、「どうやったら反応を取れますか」という、もっと重要な部分にフォーカスしてきている感覚があります。情報の非対称性をうまく利用して案件を取ろうとするやり方もあるので、事業目線で臆せず立ち向かえる状態を作っていけるといいですよね。
ということで今回は、SEO業界は「思っているような商品構成ではなくなっていますよ」という話でした。人材面でも流出があって、事業会社側に流れちゃっているケースも多い、という感覚もあります。
SEO会社の提供価値が変化する中で、支援範囲をどこまでと考えるべきか。中小企業のSEO対策と守備範囲では、SEOをWebマーケティングの一部として捉え、社内に残す判断と外部の専門家へ任せる作業を扱っています。
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