第304回:地方の副業人材活用事例は、報酬と調整役まで見て読む
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。
地方の企業と、都市圏で副業をしたい方を結びつける。そういう事例を読むと、自社でも安い費用で良い人に手伝ってもらえるのでは、と感じるかもしれません。ただ、そこに書かれている形を、そのまま実践できると思うと危ないんですね。
社外の人材を活用すること自体は、中小企業にとって大事です。距離が離れている人や、限られた時間だけ働ける人にも力を貸していただく。そのとき、成功しているように見えるマッチングを、どこから見るかという話をしたいと思います。
低い報酬だけを、成功の理由として読まない
きっかけになったのは、日経トップリーダーの2021年10月号に載っていた、鳥取県の副業・兼業人材活用の記事です。県内の中小企業が、間に入る組織の支援を受けながら、都市圏の人材とつながるという事例でした。
その記事を読んで私が気になったのは、金銭だけで釣り合いが取れているのか、ということです。地域を助けたい、プロジェクトを通じて学びたい。そうした思いのある方が、仕事を引き受けていました。受け入れる会社側からも、この報酬でここまでやってもらっていいのか、という声が出ていたんですね。
安い金額で依頼できているなら、その差を何が支えているのかまで見たいところです。地域に貢献できることや、経験、実績を得られることに価値を感じているなら、その分も含めて成り立っているわけです。
それをすぐに、やりがいだけに頼っていると片づけたいわけではありません。ただ、同じように依頼先が増えたときも、自社を選んでもらえるのか。続けるうちに、その動機が変わってこないか。そこまで考えないと、継続する仕事としての形は見えてきません。
感謝しているなら、継続できる条件も考える
「この金額で、こんなにやってくれてありがたい」。それだけ価値を感じているのなら、報酬を上げることも考えた方がいいと思います。役に立ってもらっているのに、最初の条件のままずっと続くとは限りません。
副業の方には、依頼しやすい面がありますが、同じように、別の仕事へ移りやすい面もあります。もっと報酬が欲しいと強く言うのではなく、黙って離れていくかもしれないんですね。
やってほしい仕事と、相手が受け取るものが釣り合う形を考える必要があります。予算を増やせないなら、その条件でどんな仕事をお願いするか、どういう経験の方にお願いするかも関わってきます。
最初は慣れていない人でも、一緒に仕事をするうちに上達してくれればいい、という考え方もあるでしょう。ただ、力がついたときに、それに見合う条件のところへ移ってしまう可能性はあります。育ってくれれば、そのまま自社に残ってくれるという前提にはしない方がいいと思います。
小さな企業に、出せる費用の限界があることは分かります。その予算感で成り立つ仕事を組み立てられるなら、取り組む意味はあります。ただ、受ける方の善意や学びたい気持ちが、ずっと同じ強さで続くという形には頼りすぎないことです。
マッチングの裏にいる、調整する人を見る
もう一つ、その事例で大きかったのは、間に入る人の働きです。組織があるからというだけではなく、中にいる方が、依頼する企業と受ける人の間を細かく調整していました。
「この人に返事をしましたか」「この仕事の粒度は大きすぎますよ」「作業ではなく、課題を伝えないと」。そういうところまで見てくれる方がいる。発注や、できたものを確かめる検収ができる人が間にいるから、成り立っている部分があるんですね。
人を紹介してもらうことと、一緒に仕事を進められる状態を作ることは、同じではありません。同じ仕組みを別の場所で作っても、調整できる人がいなければ、うまくいかないことがあります。
依頼側が、自分でもイメージできていないものをざっくり投げてしまう。戻ってきたものに「何となく違う」と差し戻しを重ねれば、受ける方も嫌になってしまいます。逆に、依頼した側も「この仕上がりでは、お金を払えない」と感じるかもしれません。
安く良い人を見つけるところだけ見ていると、この間にある仕事が抜け落ちます。事例を読むなら、誰がそこを担っているのかまで見ていただきたいと思います。
その後も、副業人材に関するご相談をいただいています。第537回:副業人材を迎える前に、自社が受け入れられる条件を考えるでは、任せたい仕事と相手の経験、社内との関わり方について、あらためてお伝えしています。
自社が依頼できる力をつけてから、相手を選ぶ
では、社外の人材を使えるようになるために、何をしたらいいのでしょうか。私は、基本的なWebの知識や、発注・検収の仕方は、自分たちでも学ぼうと切り替えていただきたいと思っています。
私のお客様でも、そこを勉強している会社は、だんだん独り立ちしています。何が問題なのかを解決してほしいのか、それとも、やることは分かっているけれど手が足りないので作業を頼みたいのか。その判断ができるだけでも、依頼の仕方が変わります。
まず、自分たちが何を頼み、何を確かめるのかを、ある程度分かるようにすることです。一回で成功するとは限りません。失敗しながら、失敗する割合を下げていくようなものだと思います。
その上で、自社で埋められない専門分野を持つ方や、一緒に考えてくれる方をパートナーとして選ぶ。結果として、その人が副業で仕事をしているのか、専業のフリーランスなのか、会社として活動しているのかがついてくるんです。
最初から「副業人材を活用するぞ」と決めるより、必要な支援に合う相手を探す方が、順番として自然ではないでしょうか。自治体や団体が何とかしてくれるのを待つだけでなく、自分たちにも依頼する力をつける。そうして外の力を借りられるようになると、安定した形で仕事を続けやすくなると思います。
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