第507回:大手の行う戦略PRは中小企業には無関係なのか?活用の考え方
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、PRというものに中小企業がどう向き合うかを、少し違う角度から整理していきます。
このPodcast/書き起こしで得られること(要点)
大手が行う「空気をつくる」ような戦略PRが、中小企業にとって無関係ではない理由が分かります。そのうえで、同じことを再現するのではなく、できあがった流れを自社の販売促進に無理なく活かす考え方を持ち帰れます。
- 大手の戦略PRが「関係ある」と言える背景
- 睡眠市場(スリープテック)を例にした、流れの見つけ方
- 自社の理念や現場に合わせて、事故なく始めるコツ
- 「選ぶ理由」をこちらから用意する、という発想
大手と中小企業は違うが、経済の中ではつながっています
大企業や目立つ企業がつくる流れに対して、「うちは規模が違うから関係ない」と線を引いてしまうことがあります。確かに、予算も体制も違うので、そのまま真似することは現実的ではありません。
ただ、経済としてはつながっていますし、世の中の流れが購買行動に影響する以上、無関係とも言い切れません。むしろ、予算がある企業が時間とお金をかけてつくった流れを、こちら側がうまく活用できるなら、それはそれで価値があると思っています。
いま選ぶ人は「選ぶ理由」を探しています
情報が多い時代は、BtoBでもBtoCでも「なぜそれを選んだのか」を説明する材料が求められます。選択が否定されると、自分の判断や価値観まで否定されたように感じやすい空気もあります。
だからこそ、こちらから判断要因を用意していくことが、今のマーケティングでは重要になります。戦略PRのように「空気をつくる」動きも、その判断要因のひとつとして働くので、使える部分は使ったほうがよい、というのが今回の結論です。
戦略PRの流れは「企業名を前に出さない」方向にも進んでいます
戦略PRは、いわゆる大企業案件として、10年以上前から言われていた言葉だと思います。Strategic PRと呼ばれることもありますし、海外発なのか日本発なのかは私もはっきり分かっていません。
PRといえば、昔はパブリックリレーションズとして「私たちはこういう会社です」「こういう取り組みをしています」と、自社をしっかり前に出すものが中心だった印象があります。ところが最近は、発信母体を一旦は隠しておくような、問いかけから始めたり、社会の流れを示すだけに留めたりと、見せ方が変わってきていると感じます。
具体例としての睡眠市場と、スリープツーリズム
流れの例として分かりやすいのが、睡眠市場だと思います。スリープテックと呼ばれることもありますし、身近なところだと『Pokémon Sleep』のようなアプリを使っている方もいるかもしれません。
私は睡眠時間が不規則なので『Pokémon Sleep』はやっていませんが、寝るタイミングの管理や睡眠の記録(スリープトラッキング)自体はしています。スマートウォッチや睡眠リングのようなものも含めて、ここ数年で一気に増えた印象があります。
睡眠は人間の欲求の大きな柱なので市場ができるのは自然に見えるかもしれません。けれど、昭和のころを思い出すと、寝具のように直接関係するものは別として、「睡眠そのものが市場をつくる」発想は、当時はかなりニッチだったはずです。
それが今は、睡眠に関するマーケットがあること自体に、強い違和感を持たない状態になっています。どこが仕掛けたかを特定する話ではなく、いろいろな企業が流れをつくり、それに後からうまく乗った企業もある、という動きが積み重なって今があるのだと思います。
「大きな仕掛け」は自社で再現しなくてよい
この流れの中で、日経ビジネス電子版では「スリープツーリズム」が紹介されていました。良質な睡眠を目的に、空調や内装、ヨガなどのリラクゼーション要素まで含めて設計する、といった話で、海外の調査会社の推計として市場規模の数字も触れられていたと思います。
ただ、数字が大きく見えても、それだけで「ものすごく盛り上がっている」と判断するのは早いかもしれません。ここで大事なのは、こうした企画は企業一社ではやりにくいことが多く、当然お金もかかるので、中小企業が同じことをする必要はない、という点です。
中小企業が活用するときの考え方
大企業が時間と予算をかけて、人の頭に残るように流れをつくってくれているとします。そこで、自社の商品やサービスを引っ掛けられるのに何もしないのは、私はもったいないと思います。
今回の例でいえば「睡眠」は、実は結びつけられる余地が広いテーマです。リカバリ系の飲料やウェア、リラクゼーション、空間づくりなど、つなげ方の入口は意外とありますし、業種によっては思っているより取り組みやすいかもしれません。
まずは「自分の商圏で本当に起きているか」を見回す
ニュースでは、いろいろなところが参入しているように見えることがあります。けれど、地元で見回すと、実はまだ何も起きていない、ということも普通にあります。
そこで諦める前に、実際どうなのかを確認してみてください。うまく結びつけられる余地があるのに、最初から「無理」と決めてしまうと、機会を落としてしまうことがあります。
始め方は、小さく・控えめで十分です
最初から大きな成果を狙って思い切ったキャンペーンを打つ必要はありません。慣れるまでは、小さく始めて、現場の反応や手応えを見ながら調整していくほうが安全です。
いわゆる定性的な攻め方なので、悪感情を刺激すると、積み上げてきたものが崩れる可能性もあります。特に地域では「どこが何をしているか」が見えやすいので、何でも結びつけすぎると、信用の面で不利になることがあります。
取り組むテーマは「理念と一致するもの」に絞る
睡眠に限らず、エコ(環境配慮)やSDGsのように、結びつけやすいテーマは他にもあります。逆に、業種によってはAIのようなテーマを結びつけるのに工夫が必要なこともありますし、企業として崩したくない考え方もあるはずです。
だからこそ、何でも追うのではなく、「自社のビジョンと合い、無理がない」テーマを決めて育てるのがよいと思います。慣れてくると、どのタイミングで何を出すとよいか、感覚も少しずつ掴めてきます。
「選ぶ理由」をこちらから用意する
良い商品やサービスなのに、フックがなくて選ばれにくい、ということはあります。良いのは分かるけれど、決め手がない、という状態です。
そういうときに、世の中の流れに合わせて、無理のない形で「選ぶ理由」を追加してあげるのは、販売促進の補助として有効です。大企業の戦略PRを自社で再現するのではなく、流れが生まれているところに、自然な接点をつくる、という発想です。
補足:今回触れた記事について
今回のスリープツーリズムの記事は有料記事で、後半は読めていません。ここでの話は、無料で読める範囲での感想として受け取っていただければと思います。
ただ、そうした記事を読むときも「自分には関係ない」と切り捨てるのではなく、「どう使えるだろう」と視点を変えると、見えるものが増えてくるはずです。
まとめ
大手の戦略PRは、中小企業が同じ形で実行するものではありません。けれど、世の中の流れとして育てられたテーマを、自社の販売促進や説明材料として活用することは、十分に現実的です。
大切なのは、小さく始めて、理念と一致するテーマに絞り、無理のない接点を積み上げることです。PRはお金がかかる領域でもあるので、上手なパートナー探しも含めて慎重に判断しつつ、使える部分は静かに取り入れていきましょう。
関連リンク
- 日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)公式サイト
- 『Pokémon Sleep』公式サイト
- 国連広報センター|持続可能な開発目標(SDGs)
- World Sleep Society(公式サイト)
よくある質問(FAQ)
大手の戦略PRは、中小企業には本当に関係があるのでしょうか? 同じ規模の仕掛けを再現するのは難しいですが、世の中に流れが生まれると「選ぶ理由」が増えます。その流れに自社の接点をつくれるなら、販売促進の材料として活かせる場面があります。 流れに乗るといっても、何から始めればよいですか? まずは自分の商圏で、実際にその流れがどれくらい広がっているかを見回すのがおすすめです。そのうえで、無理なく結びつけられる入口があるかを確認します。 流行に合わせて発信すると、軽く見られませんか? 毎回のように何でも結びつけると、信頼を落とす可能性があります。小さく始めて、理念と一致するテーマに絞り、やり方に慣れながら調整していくのが安全です。 睡眠のようなテーマに、自社商品を結びつけるのが不安です。 結びつけやすいテーマほど、無理をすると違和感が出ます。素材や設計、提供の仕方など、自然な接点が作れる範囲に留めると、取り組みとして成立しやすくなります。 PRを本格的にやるべきでしょうか? PRは費用がかかる領域なので、無理に本格化する必要はありません。まずは販売促進の補助として小さく取り入れ、手応えが出てから投資を検討する考え方が合うことも多いです。配信スタンド
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