第579回:AI時代にメールマーケティングはどうなっているのか?2025年最新調査からの現状
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。
このPodcastで得られること
このPodcastでは、AI時代におけるメールマーケティングの現状と、これから何を変えるべきかを整理しています。ざっと目を通してもらうと、次のようなポイントが分かるようになっています。
- チャットツールやSNSが増えても、メールマーケティングが依然として強い理由と、今後5〜10年の見通し
- 送信側と受信側、それぞれでAIがメールに与えている具体的な影響と、テクニック頼みが通用しにくくなる背景
- これからのメールマーケティングで押さえるべき設計の考え方と、実際の始め方・ツール選定のポイント
結論から言うと、メールマーケティングは今も主力チャネルのひとつであり、AIによって「やりやすくなる部分」と「ごまかしが効かなくなる部分」がはっきり分かれてきているという状況です。テクニックを盛る前に、サービスや商品の設計と、要約されても伝わるメール内容に切り替えることが重要になります。
AI時代でもメールマーケティングが主力チャネルであり続ける理由
AIの話題やコンテンツマーケティングの話題が増える一方で、メールマーケティングそのものが語られることは以前より減っています。「チャットツールやSlackが普及したから、そろそろメールは厳しいのではないか」といった声も長くありますが、現場感としてはBtoBを中心に、メール経由のコミュニケーションは依然として非常に強いチャネルのままです。
「メールが弱くなった」と言われる場面の多くは、社内連絡や既存顧客との日常的なやり取りの話です。そこは確かにチャットツールに置き換わりました。ただし、見込み客へのセールスや情報提供のチャネルとして、メールの代わりになるものはまだ出てきていません。
一時期、BtoCではLINEなどのメッセージングアプリがメールの代替になるのではないかと言われました。LINE公式アカウントからクーポンやお知らせを送る取り組みは成立していますが、メールマーケティングで行っているような腰を据えた「濃いコミュニケーション」までは置き換えられていない状態です。
大きな理由のひとつが公私の切り分
大きな理由のひとつが公私の切り分けです。メッセージアプリはどうしてもパーソナルなやり取りのイメージが強く、そこにセールスや会社からの情報を混ぜたくない、という感覚があります。LINEの有料プランを使えばプロフィールを分けることもできますが、あまり親切な設計とは言いにくく、現実としてはメールが使われ続けています。
BtoBではメールが主力
既存顧客との継続的な接点としても、特にBtoBではメールが主力のままです。代替手段として挙げられるチャットやメッセージアプリが、売上面で決定的な成果を出しているかというと、そうはなっていません。こうした状況からも、メールは今後しばらく主力チャネルであり続けると考えてよいです。
さらに、ゼロクリックサーチ(検索結果ページ上の要約やスニペットだけで用が足りてしまい、サイト自体にはアクセスされない検索行動)やブランド検索の増加によって、ユーザーは「信頼できる会社や個人を見つけたら、そこからの情報だけを追う」という行動に寄っていきます。そのときにダイレクトに届く手段としてのメールは、むしろ価値が上がっていると言えます。
送信側から見たAIとメールマーケティング
AIとメールの関係で、まず押さえておきたいのが送信側のAI活用です。ここは昔から「最適化」という文脈でさまざまな機能がありましたが、今はそれが本格的にAIとして組み込まれたツールが増えています。
AIで楽になる仕事:コンテンツ作成と配信のPDCA
Validityのレポート「The State of Email 2025 from Litmus」と、それを参照しているNukesendの「2025 AI Email Marketing Trends」などによると、メールキャンペーンでAIを使っているマーケターはすでに多数派で、クリック率や売上でも非AIより良い結果が出ていると整理されています。
メールマーケティングは、しっかりやろうとするとどうしても手がかかるチャネルです。件名を考え、本文を書き、配信時間を決めて、ABテストをして、ステップメール(あらかじめ決めたシナリオで自動配信するメール)を設計して……と、一通りやろうとするとかなりの工数になります。
そこで今大きく効いているのが、コンテンツ作成と配信のPDCAに対するAIの支援です。具体的には次のような部分です。
- 件名の案出しとテストパターンの生成
- 配信時間の最適化(読まれやすい時間帯の自動判定)
- ステップメールやキャンペーンシナリオの構成案やトピック案の生成
こういった領域はAIが非常に得意です
こういった領域はAIが非常に得意です。海外の調査では、以前は「メール1通の制作に2週間以上かかる」と答えていたチームが全体の6割以上だったところ、AI活用が進んだ結果、それが1桁台まで減ったというデータも出ています。コンテンツ作成がボトルネックでメールマーケティングに踏み出せなかった方にとっては、今はかなり良いタイミングになっています。
これまで、ステップメールのシナリオ作成や、「メール登録+ダウンロードコンテンツ」のようなフロントエンド商品(最初の接点づくり用の小さめのオファー)づくりが重くて手を付けられなかった場合も、今はAIを活用することで一気に形にしやすくなります。メールの中身を考える負荷が下がることで、「やりたいけれど時間がない」状態から抜けやすくなるという実感があります。
AIに任せてよいところと、任せてはいけないところ
とはいえ、すべてをAIに丸投げしてよいかというと、そうはなりません。現場の声としても、ネタの元からすべてAIで一括生成するのは良くないという意見が多く出ています。
AIに任せてよいのは、例えば次のような部分です。
- 社内の資料や既存コンテンツを読み込ませて、メール本文のたたきを作らせる
- 書いた文章を分かりやすい構成や文章に整えてもらう
- 件名やリード文の候補を複数出してもらい、テストにかける
一方で、「そもそも何を伝えるのか」「どんな価値を提供するのか」といった元ネタや設計は、人間が持っている必要があります。ここまでAIに渡してしまうと、中身が薄くなり、要約された時に何も残らないメールになってしまうんですよね。
イメージとしては、ネタと方向性は自分たちで決めて、その先の具体化やブラッシュアップをAIに手伝ってもらう形がちょうど良いです。ChatGPTやGeminiのような対話型AIに「自社の商品・サービス」「最近のお客様の状況」などを投げて、「この前提でメール案を出して」と依頼すると、かなり使えるものが出てきます。
メール配信ツール選び:AI機能があるものを前提にする
メールマーケティングをやるなら、メール配信ツールを使うことは大前提です。今もローカルでCGIを動かしたり、ただメールを一斉送信するだけの仕組みを使っているケースもありますが、そろそろクラウド型の配信ツールへの乗り換えを考えた方がよい段階になっています。
特に、次のようなAI機能を持っているツールを選ぶと、効果と運用負荷のバランスが一気に変わります。
- 件名の自動最適化や複数パターンのテスト機能
- 読者一人ひとりの開封傾向をもとにした配信時間の最適化
- ステップメールやキャンペーンシナリオの提案・自動配分
こうした機能はAI登場以前から存在していましたが、AIによって精度と使いやすさが大きく上がっている領域です。ツール側が最先端を追いかけてくれていれば、自動的にその恩恵を受けられます。
一方で、現場の感覚としては、メールの本文エディタがまだ使いづらいツールも多いのが正直なところです。AIと本文エディタがシームレスにつながっていて、情報の入力から本文生成、配信設定までを一気通貫で支援してくれるツールは、まだそこまで多くありません。もしそういったものが出てきたら、私自身もすぐに試したくなる領域です。
海外ツールを検討する価値
メールマーケティングツールは、海外製の方が機能面でも価格面でも進んでいるケースが多いです。日本国内のツールだと、月額1〜3万円くらいのプランが普通にありますが、海外ツールに乗り換えるだけでコストを大きく圧縮できるケースもあります。例えば、半分〜10分の1程度になることもあります。
為替の影響はあるものの、現時点では海外ツールの方が割安で、AIまわりの実装も早い傾向があります。最近は日本語対応しているサービスも増えているので、まず海外ツールを候補に入れて検討するのは十分意味があります。
開封率というボトルネックと、AIが効くポイント
どれだけよいメールを書いても、開封されなければすべてがそこで止まってしまうんですよね。メールマーケティングにおいて、開封率は一番大きなボトルネックです。
何も考えずに大量配信していると、開封率が10%台というケースも珍しくありません。私のところでは、そもそも好きで登録してくださっている方が多いので、開封率は5〜6割を超えることも普通ですが、それでも半分近くは読まれていない計算になります。
お客様の現場で運用する際には、ひとつの目安として次のようなラインを置いています。
- 当日開封率30%以上をキープする
- できれば40%以上を目指す
- トラッキングオフなどで計測されない開封も増えている前提で見る
ここに効いてくるのが、AIによる配信時間と件名の最適化です。一人ひとりの開封パターンを学習し、「この人はこの時間帯だと読んでくれやすい」というタイミングで配信してくれる機能は、すでに実装されていて、精度も上がっています。
こうした機能はAI登場前から存在していましたが、アルゴリズムの進化でより効果が出るようになっています。コンテンツ部分と配信周りの両方をAIにサポートさせることで、メールマーケティングのハードルはかなり下がると感じています。
受信側のAI変化:サマライズが「テクニック売り」を無効化していく
送信側以上に、これから影響が大きくなるのが受信側のAIです。特に、メールの要約機能がいろいろなツールに組み込まれ始めています。
Gmailを使っていると、ある程度の長さがあるメールなら、上の方にそのメールの概要(サマリー)が出てくる場面が増えています。iPhoneなどでも、OSレベルで要約機能が入ってくる流れがあります。
さらに、ChatGPTが組み込まれているブラウザ「ChatGPT Atlas」では、画面の左にウェブページ、右にChatGPTというレイアウトで表示され、そのページを開いた瞬間に「このページで多くの人が気にしそうな質問」がプリセットで3つほど並ぶようになっています。
例えばショッピングサイトを見ていると、次のような質問があらかじめボタンとして表示されます。
- この商品と他社製品の機能を比較する
- この商品の価格が最安かどうかを調べる
- 自分の用途に合っているかどうかを整理する
ユーザーは自分でプロンプトを打たなくても、その中から選ぶだけで知りたい情報を整理してもらえるようになります。これと同じことがメールでも起きてくると、従来の「読ませてその気にさせる」タイプのテクニックが一気に効かなくなる可能性があります。
セールスメールが要約され、比較される前提になる
例えば、あるセールスメールで「新商品のキャンペーン」「セミナーの案内」「期間限定の割引」などを案内していたとします。GmailやOutlook側でジェネレーティブAIと連携し、次のようなプリセットが並ぶ未来は、近い将来の話として十分考えられます。
- 過去12ヶ月のキャンペーンと比べて、本当にお得かどうかをチェックする
- 競合他社の似たサービスと価格・機能を比較する
- 自分にとってどんなメリットがあるかを一言でまとめる
ユーザーがボタンを押すだけで、AIがメールの中身を読み込み、他の情報源も参照しながら「これは本当にお得か」「この会社はどういうポジションか」をまとめてくれるようになります。こうなると、表面的なお化粧や煽りコピーだけで売るやり方は、かなり厳しくなると見ておいた方が安全です。
ゼロクリックサーチによって、ランディングページ上で一生懸命工夫しても、検索結果の要約だけで用が足りてしまうケースが増えました。メールも同じように、コンテンツの本質だけが評価され、ダイレクトマーケティング的なテクニックの価値はどんどん薄れていく流れになります。
「期間限定キャンペーン」がAIに暴かれる日
特に、メールのフロントエンド商品として「月末だからキャンペーン」「年末だけの特別割引」といったやり方を繰り返している場合、AIにはパターンがすぐに見抜かれます。
例えばAIに、次のようなことを調べさせたとします。
- この会社は昨年どのくらいの頻度で同じようなキャンペーンを打っているか
- 「期間限定」と言いながら、実際にはどれくらい延長していることが多いか
- 競合と比べて本当に値引率が高いのか
過去のメールやウェブ上の情報から、こうしたパターンは簡単に出せてしまうんですよね。その方がお客様にとっては親切なので、メールクライアント側がそうした機能を標準装備してくる可能性も十分にあります。
Googleはすでに、自社プロダクト間のオートメーションを簡単に組める仕組みを出していて、「Google側がデフ
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