第510回:データ活用の第一歩は、現場で必要な情報を共有し、使ってもらうこと
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。
データ活用というと、専門の人材や高価なツール、きれいに整理されたデータベースが必要だと思っていませんか。「うちにはそういう人はいないから」と、始める前に身構えてしまう中小企業の方もいらっしゃると思います。
もちろん、専門性が必要な仕事はあります。ただ、最初の一歩はもっと身近なものでいいんです。みんなが知っておいた方がいいことを集めて、必要なときに見られるようにする。まず、そこから考えていただければと思います。
一度の訪問で修理できるように、何を共有するか
以前、ガス会社のデータ活用についての記事を読んだことがあります。会社名や細部は今はっきり思い出せないのですが、印象に残っているのは、最初から高度な分析をしたわけではなかったという点です。
修理に行くお客さんについて、どの型番を使っているか、前にどこが壊れたか、どんな問い合わせがあったか。そうした履歴を、お客さんの番号から見られるようにするところから始めたという話でした。
目的が大事なんですね。給湯器が壊れて修理を呼んだら、まず状態を見て、部品を確認し、後日もう一度来ることになる。私も似た経験がありますが、お湯が使えないまま待つのは困ります。特に冬は、お台所仕事をするだけでも大変ですよね。
一度の訪問で済ませられるようにしたい、という目的から、必要な情報を考えます。使っている機器や過去の不具合が分かれば、必要そうな部品を事前に考えられる。問い合わせの履歴も分かれば、準備の仕方が変わるかもしれません。
私がその事例から受け取ったのは、データ活用を難しく構えすぎなくていいということです。現場で何を解決したいかを聞いて、そのために共有すべき情報を集める。それだけでも、仕事を良くする入口になります。
何でも集めるより、使う場面に合わせて始める
データをたくさん入れておけば、何かが分かるのではないか。そう考えて集め始めると、項目ばかりが増えてしまいます。でも、現場で何を解決したいかが決まっていなければ、必要な項目も決められません。
項目が増えれば、集める作業も増えますし、画面も見づらくなります。探すのも大変になります。情報が多いこと自体が、使いやすさを保証するわけではないんですね。
誰が、どんな場面で、何を知りたいのかに合わせて、すぐ見られる形を作ってください。顧客単位なのか、案件単位なのかも、実際に使う状況によって変わります。
最初から専用のデータベースを作らなくても、スプレッドシートやグループウェアから始められる場合もあります。ただし、お客さんの情報などを扱いますから、権限管理や個人情報への配慮は必要です。そこは既存のツールを使ったり、設計や管理の部分だけサポートを受けたりして考えてください。
まず使ってみると、「この項目はいらない」「これも見られると便利だ」「今後はこの情報も取っておこう」と分かってきます。一歩進んで初めて、次の景色が見えるんですね。最初の設計が最後まで正しいと思わず、変えられる形で始める方がいいと思います。
良い分析結果が出ても、現場が使うとは限らない
データを集めて、分析して、問題が解けた。そこで仕事が終わった気持ちになりがちですが、もう一つ、使ってもらうところまで考えなければいけません。
データ係の人へ毎回頼まなければ見られないのではなく、適切な権限を持つ人が、必要なときに使える状態にしたいですよね。そのためには、まず使いやすさが必要です。複雑な仕組みを作ってしまうと、操作しにくいだけでなく、後から変えたくても変えにくいことがあります。
そして、使われない理由は操作性だけとは限りません。今までのやり方を変えるのが面倒だったり、その職場の人間関係が関わっていたり、前任者が作った別のシートがあったり。会社ごとに事情があります。
「役に立つ結果を出したのだから使ってくれるはず」で終わらず、使わない理由も解きほぐす必要があります。データを扱う側にとっては、分析の外の仕事に見えるかもしれませんが、現場に効果を出すにはそこまでが必要なんです。
きれいな仕組みを完成させることより、実際の仕事の中で使われることを考えてほしいと思います。そのためにも、最初から大きく固めすぎない方が、調整しやすくなります。
お客さんに理由を説明できるかも確かめる
使いたくても使えない理由として、結果を説明できないという問題もあります。システムが何かを薦めてきても、現場の人が「なぜそれがいいのか」を話せないと、お客さんのところへ持っていきにくいんですね。
「なぜそう言えるんですか」と聞かれて、「ツールがそう出したからです」では、なかなか納得してもらえません。自分で計算や根拠を説明できるものであれば、話を進めやすくなります。
分析結果の良さだけでなく、それを使う人が理解し、その先のお客さんへ説明できるかを見てください。現場の人が納得できる説明を用意しておくことも、使ってもらうための仕事です。
場合によっては、最初から分析の精度を追い込みすぎるより、現場が把握でき、説明しやすいものから始める考え方もあります。以前より仕事が良くなり、実際に使われるなら、そこから進めていけばいいんです。
データを集めて解くところから、現場へ定着させるところまで。その全体を考えながら、まずは共有したい情報を、必要な人が使えるようにする一歩を踏み出していただければと思います。
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