第552回: AIに選ばれるために。今、中小企業が取り組むべき2つのこと
内容について
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、検索が人間ではなくAIやAIエージェントが主体になっていく中で、「AIに選ばれる会社」になるために、今なにを優先して整えておくべきかを、具体的に整理しました。
例えば…
- AI Overview(AIO)などの普及によって、自社サイトへのアクセスやページビューがどう変わっていくか
- ユーザーではなくAIが情報収集を行うようになり、Webサイトがデータベース化するとはどう言うことか?
- アクセス解析の数字が変わっても、そこで慌てないためにどこを見ておくべきか
- ユーザーの検索が極端にパーソナライズされるとき、どんなコンテンツが選ばれやすいのか
- 「比較サイト」「一括見積もり」のようなモデルが厳しくなる理由と、事業会社側がどう備えるか
- マルチモーダル(文章・画像・動画など)の時代に、自社コンテンツをどんな形で用意しておくべきか
大枠で話をまとめると、
AIに選ばれるために中小企業が今押さえておくべきポイントは、次の2つです。
- 外側の変化:「Webサイトに来てから考えてもらう」ではなく、「来る前にほぼ決まっている」前提で、サイトを情報が引き出しやすい、情報が詰まっているデータベースとして整える。
- 内側の変化:ユーザーの検索がパーソナライズされるので、「誰に・どんな価値を提供するのか」を細かく言語化し、ターゲットごとのコンテンツとをできるだけ置いておく。加えて言えば、細分化しているとキリが無いので、ユーザー毎のニーズの収束を意識してまとめる。
AI時代にまず押さえるべき「2つの変化」
AIの話というと「ハルシネーション(嘘をつく問題)」「学習データの著作権」「データの「かたより」によるバイアス」など、SNSなどでも多く議論されている話題はたくさんあります。
ここでは、ビジネス前提でまずは、デジタルマーケティング/ウェブマーケティングの現場で何が変わるのかと言う観点で考えていきましょう。
結論として、まず押さえておきたいのは次の2つです。
- 外面的な変化:Webサイトに来るのはAIかAIのサポート受けた人になる
- 内面的な変化:ユーザーの検索が今まで以上にパーソナライズされる
1つ目の変化:Webサイトに来る人・来方が変わる
アクセスは減る、「意思決定してから来る人」が増える
まず外から見て分かりやすい変化は、自社サイトに来る「生の人間」が全体として減っていく流れです。
AI Overview(AIO)を含め、生成AIを組み込んだ検索が広がると、ユーザーは
- 検索結果やAIの回答画面の中だけで情報を集める
- そこでだいたいの比較や検討を済ませてしまう
ようになっていきます。後述する、ゼロクリックサーチという機能的な次元だけではなく、購買行動という心理的な次元で、比較検討を人間の行う活動と見なさなくなる。レジで小銭を数えるのではなく、ざっくり小銭投入口に投げ込むのが「当たり前」になる。
この結果、
- 「とりあえず公式サイトを見てから考えよう」
という行動は、今より確実に減るでしょう。なぜなら、圧倒的に客観的な情報量が少ないからです。
アクセス解析の数字でいうと、
- ページビュー(PV)
- セッションあたりの平均ページビュー
- 平均滞在時間
といった指標は、少しずつ落ちていく可能性が高いです。実際に既にそのような傾向になっているサイトがほとんどでしょう。その代わりに、
- コンバージョンする人だけが、突然ひょこっと現れて決めて帰っていく
というデータの形が増えていくでしょう。いわゆるバタフライサーキットのパルス消費状態ですね。
サーチコンソールで見えるものも限られていく
では、Webマーケティング、特にSEOの現場を支えてきた検索クエリのデータはどうでしょうか。GoogleがAI Overview(AIO)周りで、今のサーチコンソールのような検索クエリに関するデータをどこまで出してくれるかは、現時点では分かりません。プライバシー尊重の流れの中では、これが大きく我々に開示されるようになることは考えづらいですね。
そして
- AI検索は一人ひとりにかなりパーソナライズされる
- プライバシーの観点から、個人にかなり近いクエリは出しづらい
という前提を考えると、今まで以上に細かいクエリ情報は取りづらくなるでしょう。
現状のサーチコンソールでも、条件を細かく絞り込んでいくと、
- 合計のクリック数・表示回数が合わなくなる
ことがあります。これは、絞り込みを進めると特定のユーザーの行動に近づいてしまうため、その部分のデータを表示しない仕様になっているからです。
AI検索の場合は、今よりさらにその傾向が強まるでしょう。つまり、数字だけを追いかけるアクセス解析では、手がかりが今よりも減るという前提に立った方が現実的です。
ゼロクリックサーチが「当たり前」になっていく
こうした流れは、いわゆるゼロクリックサーチという言葉でも表現できます。
ゼロクリックサーチとは、
- 検索結果の画面からどこにもクリックせずに、情報探索が完了してしまう状態
のことです。
Googleに限らず、ChatGPTやClaude、PerplexityのようなAIツールでも、
- 質問を投げると、かなり長めのまとめ文章が返ってくる
- リンクをクリックしなくても、とりあえずの答えが得られる
という使い方が主流になっています。
実際に、私が見ているクライアントさんのデータでも、
- サイトに来る人は少ない
- でも、来た人のコンバージョン率はかなり高い
というパターンが増えています。情報探索はAIの画面で済ませて、「申し込み先を決めてからサイトに来る」という動きに変わってきているわけです。
Webサイトは「データベース」としての役割が強くなる
ここまで聞くと、
「じゃあ、もうWebサイトはいらないのか」
という気持ちになるかもしれませんが、そうではありません。
別の回でもお話ししましたが、GoogleはWebサイトの情報を重要なデータ元として扱います。これは今後も変わらないでしょう。
実際、海外のGoogleマップでは、店舗ページのFAQがなくなり、AIチャットに置き換わった例があります。そのとき、AIチャットの情報源として優先されたのは、
- 店舗の公式ウェブサイト
- Googleビジネスプロフィールに掲載されている情報
で、それでも足りないときだけ、外部の第三者データが参照される仕様になっていました。
これと同じように、今後も検索エンジン側から見た「公式の情報源」として、Webサイトは重要な存在であり続けます。ただし、役割は変わります。
これからのWebサイトは、
- 来てもらってからバナーや導線でクロージングする場所
というよりは、
- 誰に対して、どんなサービスを提供していて、どんな価値を出しているのか
- その人たちのどんな悩み・状況に応えているのか
といった情報を、きちんとデータベースとして公開している場所であることが求められます。
AI や AI エージェントは、すみからすみまで効率よく情報を拾っていきます。彼らが必要とするのは、主観的な情報やセールスのために誤魔化した、大きく見せようとしたような情報ではなく、客観的で比較できる確固たる情報です。
あなたのサイトは一次情報の場所として非常に重要な場所ではありますが、そこに情報がなければ他のサイトに行き、不確かな情報や自分たちにとって不利な情報を持ってくるかもしれません。
2つ目の変化:検索が圧倒的にパーソナライズされる
「○○ 比較」「○○ おすすめ」から、状況込みの長い質問へ
もう一つ、内面的な変化として大きいのが、検索が極端にパーソナライズされることです。
これまでの検索は、どちらかというと機械の性能に合わせて、
- 「〇〇 比較」
- 「〇〇 おすすめ」
のような短いキーワードで行うことが多かったと思います。
しかし、チャット形式のAIに慣れてくると、
- 今こういう状況で、
- こういうことをしたくて、
- ここが大事で、ここはあまり気にしていなくて、
といった自分の状況を含んだ長い文章で質問する人が増えていきます。
例えば、
「今こういう規模の会社で、マーケティング担当を1人でやっていて、 予算はこのくらい、ただ人手が足りないのでそこはツールで補いたい。 こういう条件のときに、どんなツールを選ぶべきか。」
といった具合です。
このときユーザーは、
- 「○○ 比較」
- 「○○ 一括見積もり」
のような検索をしなくなります。AI側が、条件に合う選択肢を自動で比較してくれるからです。
「比較サイト」「一括見積もり」に起きること
この流れは、
- 比較サイト
- 一括見積もりサイト
- アグリゲート系のメディア
などにとって、かなり厳しいものになります。もし各社が自社の情報をしっかり発信するようになれば、ユーザーはAI経由で直接それらの情報を見に行くようになるので、真ん中でまとめているサイトの価値は相対的に下がっていきます。
ただ誤解を恐れず言えば、比較サイトや一括見積もりサイトというのは、実際には中間マージンをとっているという存在であることが多く、そもそも企業がきちんと情報を出し、それをコストなく比較検討してくれるツールがあれば、そちらが使われる方が無駄のない経済活動の実現という観点では喜ばしいことだと思います。
なのでそういった流れになってくれればとは思いますが、余談ですが、ああいったところの手数料って本当に高いですからね。
さておき、そういう社会になった時に事業会社がきちんと恩恵を得るために必要なアクションがあります。それは
- 自分たちがどういう人向けのサービスなのか
- どんな強み・価値を持っているのか
を、自社側でしっかり言語化し、コンテンツとして出しておくことです。
「誰にでもOK」なメッセージは選ばれにくくなる
裏側で動いているのは、Googleにしても、ChatGPTにしても、ClaudeやAnthropicのモデルにしても、LLM(大規模言語モデル)です。
このLLMの世界の中で、
- どんなユーザーのどんな条件のときに
- どの会社・どのサービスを候補として挙げるか
が決まっていきます。
ここで、Webサイト上の情報が
- 「誰でも歓迎」
- 「幅広く対応」
のようにぼんやりしていると、どの条件のときにその会社を出せばよいかが分かりづらい状態になります。
逆に、
- こういう規模の会社の
- こういう立場の人が
- こういう悩みを持っているときに合うサービスです
というところまで書かれていれば、AI側も、
「この条件なら、この会社を候補に入れておこう」
と判断しやすくなります。
つまり、これからのコンテンツは、
- 取りたいお客さんを明確に絞り込んで
- その人向けに、静的なページとして情報を置いておく
必要がある、ということです。
マルチモーダルと「情報の受け取り方」のパーソナライズ
パーソナライズは、「条件」だけではありません。
どのような形で情報を受け取りたいかという好みも、どんどん反映されていきます。
マルチモーダルという言葉があります。これは、
- テキスト・画像・動画など、複数の形式の情報をまとめて扱えるAI
のことです。
人によっては、
- 図やイラストで理解したい
- 動画で見て理解したい
- 文章でじっくり読みたい
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