第499回: Web業界に限らず「マッチング・一括見積サイト」は使わない方がよい理由
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、Web業界に限らず「マッチング・一括見積サイト」は使わない方がよい、という話を整理してお届けします。
このPodcast/書き起こしで得られること(要点)
結論から言うと、マッチング・一括見積(比較)サイトは、短期的には楽でも、長期的にはおすすめしません。理由は大きく3つで、中間マージンで予算が目減りすること、価格競争で品質のしわ寄せが起きやすいこと、そして自社の「探す・見抜く筋力」が育たず、依存させられてしまうことです。
あわせて、「それでも探すのが怖い」というときに、どこへお金を使うと自社の資産が残るのか。私なりの現実的な代案もまとめます。
新年のはじまりに触れておきたいこと
※これは2024年の第1回で、収録は1月1日の深夜24時57分ごろでした。令和6年能登半島地震が起きた1月1日16時10分から8時間後の収録でした。
1月1日から大変な事態が起きていて、犠牲者の方が少しでも少なくなることを強く祈っています。
私自身も、いとこの家族が金沢にいるので心配しながら過ごしていましたが、避難していたと聞いてひとまずは安心しました。ただ、被害の状況が日々見えてくる中で、何とも言えないスタートになったと感じています。
結論:マッチング・一括見積サイトは使わない方がよい
新年の最初に何を話そうか考えて、過去のメールマガジンや配信を見返していました。その流れで、以前も扱った「マッチングサービス」「一括見積もり」「一括比較」「一括資料請求」といった類のサービスを、改めて取り上げます。
私の結論は明確で、基本的には使わない方がよいと思っています。
これはWebやITの業界に限らず、できるだけそうした方向で進めた方がよい、という意味も含めています。
理由1:中間マージンが発生し、予算が現場に届かない
マッチング・一括見積の仕組みは、必ずと言っていいほど中間マージンが発生します。
目安としては20%前後が発生するケースが多く、結論から言えば,例えば「100万円」支払った案件でも、実際に製作側に回るお金が1大きく目減りするからです。
事業者側の感覚で言うと、「お客さんが支払ってくれたお金を、きちんとお客さんのために使い切れない」のが悩ましいのです。極端に言えば、予算の一部が最初から別のところへ流れてしまうので、成果に直結する工数や改善に回しづらくなります。
「代行してくれている価値」はあっても、目減りは起きる
もちろん、こうしたサイトは「探す」「選ぶ」という部分を代行してくれています。そこには対価としての意味がありますし、何の価値もないお金が飛んでいく、と言い切るつもりはありません。
ただ、発注側が支払った予算のうち一定割合が、最初から現場の作業以外に消えていく構造は変わりません。この前提を、まず忘れないでほしいと思っています。
理由2:価格競争が前提になり、品質のしわ寄せが起きやすい
一括見積や相見積もりサイトは、「安くなる」印象が強いと思います。実際、安くなることもありますが、ここに落とし穴があります。
案件を取るために、登録している会社の多くは、どうしても価格勝負になります。
いまは昔のような「ハッタリ価格」よりも、最初からギリギリの適正価格で提示している会社が多いと私は見ています。そこからさらに安くしないと選ばれない、という状況が起きます。
目減りの例
たとえば、普通に依頼したら100万円かかるものを、相見積もりサイト経由で80万円で発注できたとします。
みなさん=発注側は「20万円得した」と感じるかもしれません。ただ、100万円かけないと作れないものを、80万円で同じように作るのは難しいです。
会社が吸収できる部分には限界があるので、そのしわ寄せは、工数や確認の厚み、品質の作り込みに出ます。また、手数料分を制作会社は、みなさんのために使うべきお金からマイナスします。そうすると、実質60万円くらいのものしかできなかったりするわけです。
結果として、6〜8割くらいの品質のものが納品されると考えた方が現実に近い、というのが私の感覚です。
「値下げ」ではなく「その会社の適正価格」が合う相手を探す
本当は、80万円で“きっちり”やれる会社を探す方がいいのです。会社の仕組み化や無駄の省き方によって、他社なら150万円かかるところを120万円でできるような会社はあります。
大事なのは、無理に値下げさせることではなく、最初から適正価格と期待が噛み合う相手を見つけることです。
理由3:「探す・見抜く筋力」が育たず、依存させられてしまう
「探すのが大変なのは分かる。でも、探した方がトータルで絶対にいい」。
私はそう考えています。なぜなら、良い相手と出会うまでの試行錯誤そのものが、会社の資産になるからです。
多くの会社は一発で決まりません。入れ替えを繰り返したり、いったん良いと思った相手でも景気の変化などで急に改悪されたり、状況が変わったりします。
そうした経験を越えて、「自分たちは何を基準に選ぶべきか」「何を聞けば適正が見えるのか」という判断の型が育ちます。
これからWeb業界は人が減っていく
私は、これからもっとWeb業界は人が減ってきて、会社も減ってくると思っています。そうなるとフリーランスの方なども含めて選択肢が増える中で、取捨選択して成功したノウハウを持っているかどうかが、会社にとっての大きなアセットになります。
ここを最初から諦めて相見積もりサイトに依存してしまうと、いつまでたっても筋力が鍛えられません。結果として、損がどんどん膨らんでいきます。
上の立場の方にお願いしたいこと
探す過程では、うまくいかないことも起きます。そのときに「この業者はダメだったんだな」と担当者を責めてしまうと、担当者は萎縮して、「怒られない選択」をしがちになります。
そうなると、選ぶ基準や資料が用意されていて言い訳がしやすい、ああいったサイトに流れやすくなります。だからこそ、会社全体の取り組みとして見て、探すこと自体を資産だと捉えてほしいと思います。
それでも不安なら「サイトに払うお金」を“味方”に使う
とはいえ、「探すのが大変だから、どうしようもない」というのも現実です。
そこで提案したいのは、相見積もりサイトに払う中間マージン相当を、別の使い方に変えることです。
たとえば、100万円のうち20万円〜30万円が持っていかれるなら、その20万円〜30万円を「判断の味方」に使う方が、会社のナレッジが残ります。
- 経営者仲間など、詳しい人にきちんとお金を払って相談できる関係を作る
- 副業・スポットの人材に、セカンドオピニオンとして提案を見てもらう
- 探してきた会社の提案や見積の妥当性を、一緒に整理してもらう
この形なら、「なぜそう判断したのか」まで一緒に積み上がるので、自社の資産になります。
良いところを探すこと自体は、できるだけアウトソーシングしない方がいい、というのが私の考えです。
システムも、いきなりスクラッチにしなくていい
WebやIT、システムの領域は、金額が「時価」のように感じられて難しいですよね。
ただ、いまは何でもかんでもスクラッチ(1から全部作る)というケースは、それほど多くないとも感じています。
クラウド型のサービスや、ベースとなる仕組みを活用することで、サービス選定の延長でまとまることもあります。たとえばサイボウズさんやZohoのように、導入の支援まで含めてサポートが用意されているケースもあるので、苦手意識を強く持ちすぎず、自分たちの言葉でぶつかっていけばいいと思います。
まとめ
マッチング・一括見積サイトは、短期的には楽です。ただ、中間マージンと価格競争で発注側の満足度が下がりやすく、さらに自社の判断筋力が育たず依存させられてしまうという構造があります。
探すのが大変なときほど、サイトに払うお金を「判断の味方」に振り替えて、会社の資産を残す方向で進めてみてください。
相談できる人、相談できるサービスを見つけることは、かなり優先度高めで着手しておいた方がいいと思います。
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よくある質問(FAQ)
なぜマッチング・一括見積サイトをおすすめしないのですか?中間マージンが発生して予算が目減りしやすいこと、価格競争が起きて品質のしわ寄せが出やすいこと、そして「探す・見抜く筋力」が育たず依存させられてしまうことが理由です。短期の楽さと引き換えに、長期の損が大きくなりやすい構造があります。
手数料は、発注側にとってどんな問題になりますか?目安として20%前後の中間マージンが発生するケースが多く、発注側が支払った予算の一部が、成果に直結する工数や改善に回りにくくなります。結果として「払った金額分の価値を、現場で使い切れない」状態が起きやすくなります。
相見積もりサイトで安くなったら、得をしているのではないですか?たとえば100万円のものが80万円になったとしても、100万円かけないと作れないものを同じように作るのは難しいです。しわ寄せは工数や確認の厚み、品質の作り込みに出やすく、結果として期待した体験や成果に届かないことがあります。
探すのが怖い場合は、どうしたらよいですか?相見積もりサイトに払う中間マージン相当を、セカンドオピニオンや相談できる人に使うのがおすすめです。一緒に判断した理由まで積み上がるので、自社のナレッジとして残り、次の選定が楽になります。
業務システムの導入も、同じ考え方でよいのでしょうか?同じです。いきなりスクラッチで全部作る前提にせず、クラウド型のサービスや既存の仕組みを選定することでまとまるケースも多いと感じています。だからこそ、判断基準を持てるようにしつつ、必要に応じて相談できる味方を確保しておくことが大切です。
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