第494回: [現場雑談]PPCと比べたSEOの長所と言われていること、それは本当?
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。
今回は「PPCと比べたSEOの長所と言われていること、それは本当?」というテーマで整理します。きっかけは、海外のSEOメディアであるSearch Engine Journalに、SEOとPPCの長所・短所・違いをまとめた入門向けの記事があったことです。
この記事を題材にしつつ、私は「あら探し」をしたいわけではありません。現場でSEOを見ている立場として、よく語られる“SEOの良いところ”が、今の状況だとどう見えるのかを、なるべく正直にお伝えします。
このPodcast/書き起こしで得られること(要点)
結論としては、SEOもPPCも性質がまったく違うので、どちらが正しいという話ではなく、状況に応じて組み合わせるのが自然です。逆に言うと、SEOを「安い」「放っておけば安定する」といったイメージのまま捉えると、判断を誤りやすい時代になっています。
この記事では、Search Engine Journalの記事に挙げられていたSEOの長所3つを取り上げ、現場感の補足を入れます。そのうえで、SEOの短所として挙げられていた項目も踏まえながら、最後に「過剰な期待をしないための考え方」をまとめます。
今回の題材:Search Engine Journalの記事と、立ち位置の確認
今回取り上げるのは、Search Engine Journalの「SEO vs. PPC Pros, Cons, and Differences」という記事です。書き起こしでは“2023年11月30日付の記事”として紹介しており、入門向けの記事という位置づけでした。
なお、この種の記事はSEOメディアが書く以上、SEO寄りに見える部分が出やすいのも自然だと思います。
ただ、結論が「どちらか一方ではなく、両方を使いましょう」という着地になっている点は、私もその通りだと感じます。今さらSEO対広告のような対立で語るのは、あまり建設的ではありません。
参考:SEO Vs. PPC: What’s The Best Strategy For Your Business? | Search Engine Journal
SEOの長所1:長期的に見るとコストを抑えられる?
「クリック課金がない=安い」とは言い切れません
記事でまず挙げられていた長所は「SEOは長期的に見るとコストを抑えられる」というものです。PPCのようにクリックのたびに支払うわけではない、という説明は分かりやすいですし、確かに“直接のクリック課金”はありません。
ただ、現場感として強く言いたいのは、SEOのコストは“間接的”という言葉で軽く扱えるほど小さくない、という点です。今のSEOではコンテンツがほぼ必須になっていて、しかもコンテンツは人件費が中心になりやすいので、簡単に削れません。
SEOの実施コストは、むしろ上がっていると見たほうが安全です
実際の現場として考えると、記事制作のためにライターだけでなく、内容によってはデザイナーが必要になったり、取材や社内の確認が発生したり、画像や動画などの要素が必要になったりします。これらの負担は、実質的に「自然検索からの露出を得るため」の投資になりやすいです。
だから私は、SEOを「そんなにお金がかからないもの」と捉えるよりも、むしろ“お金がかかる領域になっている”と見たほうが判断を誤りにくいと思っています。
昔はテクニカルな手当てで成果が出やすい時代もありましたし、コンテンツ制作の市場単価も今ほど高くありませんでした。けれど今は、良いものを書かないと露出しづらいですし、良いものを継続するにも負担がかかります。
初期コストの大きさと、運用・更新の前提も忘れないでおきたいです
「長期的に安くなる」というロジック自体は、初期の投資が資産として積み上がる、という意味では理解できます。ただし、その資産が“長持ちするかどうか”は別問題です。競合が似た訴求をしてきたり、検索結果の環境が変わったりすると、作ったものがそのまま残り続けるとは限りません。
また、コンテンツ制作のコストが重いからこそ、ChatGPTなどを使って制作負担を下げられないか、という試行が増えています。実験が増えている背景そのものが、「今のSEOはコストを無視しづらい」という現実の裏返しだと思います。
SEOの長所2:長期にわたって安定したトラフィックを提供できる?
「放置で安定」は、今は期待しないほうがいいです
2つ目として挙げられていたのが「長期にわたって持続可能で安定したトラフィックを提供できる」という話です。これも、丁寧に手入れをし続けている前提なら、ある程度は成立します。いわゆるエバーグリーンコンテンツ(継続的に価値が落ちにくい記事)という考え方も、根っこはそこにあります。
ただ、現場感としては「良い記事を作ったので、しばらく放っておいても安定する」という発想は、今はかなり危ういです。放置すると内容が古くなりますし、競合は上位ページを観察して似た形に寄せてきます。結果として、作った内容が風化しやすく、維持のための手入れが必要になりやすいです。
ボラティリティ(変動の大きさ)を前提に置く必要があります
さらに言うと、コアアップデートのような検索側の変化があると、伸びたり落ちたりの振れ幅が出ます。安定を期待して事業の軸に据えるには、以前よりも勇気が要る時代になった、と私は感じています。
SEOが役に立たないという話ではありません。積み上げとして効く場面は確かにありますし、長期で見れば効率の良い取り組みになることもあります。ただ、過剰な期待を持たず、他の導線も含めて複線化しておくほうが安心です。
PDCAの回転速度は、PPCと比べて明確に遅いです
ここはSEOの弱点として分かりやすいところです。PPCは、出した瞬間から数字が返ってきやすく、運用の手応えを掴みやすいです。一方でSEOは、公開して、クロールされて、インデックスされて、そこから徐々に動く、という段階を踏みます。うまく上がるなら、という前提もあります。
改善のサイクルを素早く回したいとき、SEOだけに寄せるのは難しくなりがちです。だからこそ、性質の違うPPCと組み合わせて考える、という話につながっていきます。
SEOの長所3:ブランドの信頼性と信用性を高められる?
単純接触の観点では、確かにSEOは強みがあります
3つ目の「SEOはブランドの信頼性と信用性を高めることができる」は、3つの中では比較的納得しやすいと感じました。幅広いキーワードで検索結果に露出し、その先のページまで読まれる機会が増えると、単純接触の積み重ねが起きやすくなります。
検索広告は“今すぐ”の文脈になりやすく、何度も見て覚えてもらう、という性質とは少し違います。その点、SEOはさまざまな入口から出会いを作りやすく、じわじわ信頼につながりやすい面があります。
ただし「SEOだから信頼される」とは考えないほうがいいです
一方で、SEOだから信頼される、PPCだから嫌われる、という単純な比較は危ないと思っています。広告で嫌われやすいのは、たとえばYouTubeで強制的に挟まるものや、急に全画面に出てくるような表示、煽りが強いものなど、出し方や場所の問題であることが多いです。
少なくともPPCの検索広告は「広告だ」と分かりやすいので、必要な人にとってはむしろ判断しやすい面もあります。お金を払って出していること自体が、一定の体力や真剣さのシグナルとして受け取られることもあります。結局は、SEOでもPPCでも、中身と出し方で信頼は左右されます。
記事に挙がっていたSEOの短所と、現場感の補足
記事では短所として複数の項目が挙げられていました。Podcast内でも触れた通り、ここは箇条書きで確認しておくと整理しやすいと思います。
- 結果を得るには忍耐が必要:改善の結果が返ってくるまで時間がかかりやすく、原因の切り分けも難しくなります。
- 競争が激しい:常に全力で更新し続けるような感覚になりやすく、労力が前提になります。
- 成果維持のための継続的な努力が必要:コスト・品質・成果のすべてに関わり、継続が前提になります。
- 検索エンジンのアルゴリズム更新の影響:コアアップデートなどを含め、変動が出る可能性を前提に置く必要があります。
- 広告枠の影響で、オーガニックの視認性が下がる可能性:当時の所感として、SGEのような動きも含め、従来の検索結果が下に追いやられていく印象があります。
短所を並べると悲観的に見えるかもしれませんが、私は「だからやらない」という話ではないと思っています。むしろ、短所を前提として設計することで、SEOを冷静に扱えるようになります。
まとめ:SEOは必要だが、過剰な期待は持たない
SEOは、幅広いキーワードで露出して、見込み客にゆっくり知ってもらう導線として、今でも重要です。クリック課金がなく、接触回数を積み上げやすいという意味では、確かに価値があります。
ただし、SEOが「安い」「安定する」「一度作れば長持ちする」といったイメージのまま進めるのは危険です。コストは上がりやすく、手入れが必要で、変動も前提になります。手段から入るのではなく、「どういう入口から、どういうお客さんに来てもらいたいか」を先に置き、SEOとPPCを含む手段を組み合わせて考える。その順番が、今はより大切だと感じています。
関連リンク
- 検索エンジン最適化(SEO)スターター ガイド | Google Search Central
- 検索広告: 新規顧客を獲得 | Google 広告
- 検索広告って、そもそもどんな広告? | Google 広告
- Google Search’s guidance about AI-generated content | Google Search Central Blog
よくある質問(FAQ)
SEOはPPCより「安い施策」だと考えてよいのでしょうか?クリック課金がない、という意味では分かりやすいのですが、現場ではコンテンツ制作や更新の負担が大きくなっています。長期で見れば効率が良くなることはありますが、「安い」と短絡せず、必要な体制とコストを見込んで考えるのが安全です。
SEOは「安定したトラフィック」をもたらすと聞きます。本当ですか?手入れを続ける前提なら一定の積み上げは期待できますが、放置で安定するとは考えないほうがよいです。競合の模倣や内容の風化、検索側の変化によって、伸び縮みが出る前提で設計しておくと安心です。
PPCは広告なので、信頼されにくいのでしょうか?広告だから一律に避けられる、という話ではないと考えています。嫌われやすいのは出し方や場所の問題で、PPCの検索広告は分かりやすいからこそ判断材料になる場合もあります。結局は中身と出し方次第です。
SEOとPPC、どちらか一方に絞るべきですか?性質が違うので、状況に応じて組み合わせるのが自然です。PPCは結果のフィードバックが速く、SEOは中長期の接触回数を積み上げやすい面があります。どちらが正しいというより、目的に合わせて設計するほうが現実的です。
SEOに取り組むとき、まず捨てたほうがいい思い込みはありますか?「SEOは安く済む」「何か特別なノウハウを一振りすれば急に伸びる」「良い記事を作れば長く放置できる」といったイメージは、いったん外したほうがよいと思います。今は手入れや更新を含めた運用として考えるほうが現実に合います。
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