中小企業の経営者が自分でWebマーケティングを「やっていい」のはいつまで?
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。中小企業の経営者が自分でWebマーケティングを「やっていい」のはいつまでか、現場でよく起きる誤解も含めて整理します。
このPodcast書き起こしで得られること(要点)
社長が広告運用やSEO(検索エンジン最適化)、SNSなどの実際の現場まで抱えてよいのは、基本的に「小規模企業者」と呼ばれる規模までです。商業・サービスなら従業員5人以下、製造業などなら20人以下が目安になります。
組織が育った会社では、社長が実際の現場に入り続けるほど、意思決定や採用、営業などの社長業が滞り、会社全体のスピードが落ちます。社長は「自分でやる人」から「回る形を作る人」へ役割を移していくのが自然です。
- 「中小企業」という言葉の幅の広さと、情報の受け取り方
- 規模が違うとWebマーケの進め方が噛み合わなくなる理由
- 社長が手を動かすより、会社として回すための考え方
中小企業と小規模企業者を一緒にしない
この話は、メールマガジンでも触れたテーマのエッセンスです。ブログでは、読んでいない方にも伝わるように、必要なところだけを言葉にしておきます。
「大企業か、それ以外か」という流れで、中小企業という言葉は便利に使われます。けれど中小企業の中には、中堅と呼ばれる規模から、個人事業の延長のような小さな事業まで、かなり違う現実が同居しています。
この違いを無視すると、「中小企業はこうすべきだ」という言葉が急に乱暴になります。情報もサービスも、主語が大きいほど当てはまらない人が増えるので、自分の会社の規模に置き換えて読み直す癖をつけたいところです。
「中小企業」「小規模企業者」の定義を一度だけ押さえる
補助金の申請などでよく使われる「中小企業者」の定義は、業種で上限が変わります。たとえば製造業その他は従業員300人以下、卸売業は100人以下、小売業は50人以下、サービス業は100人以下といった区分です(資本金の要件も併記されています)。
その中でも「小規模企業者」はさらに小さく、従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)という区分です。中小企業の中の6〜7割くらいは、この小規模企業者に入るとも言われます。
制度名では「小規模事業者」という言い方が残ったままものもあり、呼び方が揺れることがあります。言葉が違っても、話の前提がどの規模を指しているのかだけは、必ず確かめてください。
統計の切り口はたくさんありますが、政府統計を眺めたとき、従業員10〜19人の企業が一つの山になっている印象がありました。現場の感覚としても、採用が増え始めて20〜30人台まで伸びていく会社が多く、ご相談の中心になりやすいところです。
規模が変わると、Webマーケの力学も変わる
同じ「Webマーケティング」でも、1人〜数人で回している会社と、20〜30人の組織で回す会社では、成立するやり方が別物になります。小さな会社向けに最適化された運用を、そのまま20〜30人規模に安易に水平展開すると回りませんし、逆も同じです。
理由は単純で、意思決定の速さ、役割分担の有無、情報の共有の仕方が変わるからです。規模が違うのに同じやり方を当てはめると、努力しているのに成果が出ない状態になりやすいんですね。
経営者が自分でWebマーケを「やっていい」のはいつまでか
私は「小規模企業者」の範囲までは、経営者が自分で手を動かすのは自然だと思っています。やりたくてやっているというより、やらないと前に進まないからです。
けれど、ある程度組織化してきた会社では、社長が広告運用やSEO、SNS運用の実際の現場を抱えるのは社長の仕事ではありません。社長がそこに時間を使えば使うほど、社長にしかできない仕事が後回しになり、結果として会社が弱ります。
社長の仕事は、組織を維持し、次の展望をつくり、採用や人事をスムーズにし、重要な商談にも出て、協力会社との関係も築くことです。組織が大きくなるほど、やることが指数関数的に増えていきます。
社長がWebに関わるなら、実際の現場ではなく「会社が回るように整える役割」を担ってください。私が勧めているのは、こんな関わり方です。
- Webの重要性を理解したうえで「やる」と決め、社内に宣言する
- 担当者やチームに権限を渡し、予算と時間を確保する
- 月1回などの節目で、数字と仮説を一緒に確認する(予算と実績の確認を含む)
- 商品設計や提案の軸など、会社の根幹に関わる部分は社長が握る
- 新しい取り組みが社内で浮かないように、後ろ盾になる
「売上の源泉なのだから、社長が自分でやるべきだ」と言われると、真面目な社長ほど無理をします。けれどその無理は長続きしませんし、組織が大きくなるほど破綻が早まります。
社内運用(インハウス化)と「社長がやる」は別の話
「内製化」や「社内運用(インハウス化)」という言葉が出ると、社長が全部抱える話にすり替わることがあります。私が言いたいのは逆で、会社として回る状態を作ることが内製化です。
小さな会社は、社長が中心になるのは避けられません。ですが組織が育ったら、担当者が回し、社長はレビューと意思決定に徹する形に変えていくほうが、会社が安定します。
「中小企業向け」の情報は、まず発信者の規模を見る
世の中には「中小企業向け」と書かれた情報やサービスがたくさんあります。けれど、その「中小企業」が5人以下を指しているのか、20〜50人を指しているのかで、話がまったく変わります。
SNS上のWebマーケ情報の多くは、小規模企業者向けです。発信者が自分の経験を出発点にしている以上、それは自然な流れですし、悪いことではありません。
ただし、匿名アカウントだったり、会社の実態が見えなかったりすると、そのノウハウがどの規模の話なのか判別できません。だから情報は、内容だけでなく「誰が、どの環境でやってきた話か」をセットで見てください。
パートナーや情報源を選ぶとき、私なら次を確かめます。ここが合うと、お互いに無理が減ります。
- 自社と近い規模の会社の支援実績があるか
- 事例を読むときに、業種だけでなく会社の規模や体制も見えるか
- 「社長が全部やる前提」ではなく、分業を前提に話が組み立てられているか
- 契約後に、誰が何を担うのか(社内と外部の役割分担)が現実的か
- 会社情報や担当者が見え、相談の入口が用意されているか
人数だけで決まるわけではありません。1人でも外注を上手く使って組織的に動いている会社もありますし、20〜30人でも社長の独断で回っている会社もあります。
それでも、自分と近い環境での経験がある相手と組むほうが、話が早いのは確かです。規模が合うと、前提の共有に時間を取られず、具体の話に入れます。
私自身が今も実際の現場をしている理由
私自身は、経営者でありながら、Webマーケティングや制作の仕事を自分でも担当しています。提供しているサービスの中核なので、自分で手触りを持っていたいという理由が半分、単純に好きだという理由が半分です。
それは同時に、私が手を動かすぶん、会社の伸び方には限界があるということでもあります。だから私は、どこかで頭打ちになることを理解したうえで、この形を選んでいます。
一方で、事業会社として売上を伸ばし、雇用を守り、給与水準を上げていきたい会社は違います。社長がボトルネックにならないように、役割を手放し、会社として回る仕組みに変えていく必要があります。
ウェブ業界が厳しい今ほど、相性の確認が大切
少し現場の話をすると、ウェブ業界は今、正直厳しいです。人が減り、単価が下がり、気づいたら会社がなくなっている、ということも起きています。
だからこそ、依頼先は「提案が派手かどうか」よりも、「自社の規模で回る形を一緒に作れるか」を見てください。インボイス対応のように一時的な需要はあっても、それが業界全体の状況を大きく良くするほどではない、というのが私の実感です。
まとめ:社長は「やる人」から「回す人」へ
経営者が自分でWebマーケの実際の現場をしてよいのは、小規模企業者の範囲までです。組織が育ってきたら、社長は方針と後ろ盾に回り、担当者が動ける状態を作るほうが会社が伸びます。
「中小企業向け」という言葉を鵜呑みにせず、誰がどの規模で積み上げた知見なのかを確かめてください。自社の規模に合ったやり方と相手を選ぶだけで、無理な頑張りが減り、取り組みが続きます。
関連リンク
- 中小企業・小規模企業者の定義 | 中小企業庁
- 中小企業の定義に関するよくある質問 | 中小企業庁
- 小規模事業者持続化補助金<一般型>申請システム
- 2025年版「中小企業白書」全文 | 中小企業庁
- 中小企業の企業数・事業所数 | 政府統計の総合窓口(e-Stat)
よくある質問
中小企業と小規模企業者は、どう違うのですか? 中小企業は業種によって従業員数の上限が変わり、幅の広い区分です。小規模企業者はその中でもさらに小さく、従業員20人以下(商業・サービスは5人以下)が目安になります。 社長がWebマーケの実際の現場を続けていいのは、どの規模までですか? 基本は小規模企業者の範囲までだと考えています。組織が育ったら、社長は実際の現場者ではなく、方針を決めて後ろ盾になる役割に移っていくほうが会社が安定します。 20〜30人規模で社長が実際の現場を抱えると、何が起きますか? 意思決定、採用、人事、重要な営業など、社長にしかできない仕事が後回しになりやすくなります。その結果、会社全体の動きが鈍り、Webマーケの以前に経営が消耗します。 内製化(社内運用)とは、社長が自分でやることですか? 違います。会社として回る状態を作ることが内製化で、社長が全部やることではありません。 情報発信者や支援会社が、自社に合うかどうかは何で判断しますか? 自社と近い規模の支援実績があるか、事例に規模や体制が見えるかをまず見ます。規模が合う相手ほど、前提が揃い、具体の相談に早く入れます。配信スタンド
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