第498回: 顧客から直接情報を集め、選ばれる提案へ反映するには
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、自分たちのところでファーストパーティーデータを持つことについてお伝えします。
Webマーケティングをやっていると、ファーストパーティーCookieやサードパーティーCookieなど、技術やアクセス解析の話を想像するかもしれません。でも、今回は技術の話ではありません。お客さんから直接得られる情報を、どう集め続けて、商売に生かすかという話です。
題材にしたいのは、以前メールマガジンでも取り上げたジャパネットのクルーズ事業です。その前に、なぜこれが大事だと考えているか、収録当時のAIに対する見通しからお話しします。
AIでコンテンツが揃った後、何を理由に選んでもらうか
収録当時、私は2024年、2025年にかけて、生成AIがもっと効率よくいろいろなものを作れるようになるのではないかと考えていました。ここからのAIの話は、その時点での予測です。
当時も分野や内容、指示の出し方による差はありましたが、ChatGPTが出始めたころに比べれば、出力はかなりよくなったと感じていました。進化が加速するかは分からないものの、私はその可能性を考えていたんです。
「こういう内容で、知りたいことをまとめて、語り口はこうして」と頼み、写真や図版も含めて作れるようになれば、ある話題について分かりやすく説明するコンテンツは、かなり作りやすくなるでしょう。
そうなると、お客さんが知りたい情報を、どこもきちんと揃えているのが当たり前になるかもしれません。どの会社も十分な情報を出せるようになったとき、何を理由に自分たちを選んでもらうのか。そこを考えておきたいんですね。
お店まで道が続いていて、快適に歩いていけることは、今では当たり前に感じます。でも、昔はその状態を整えるにもいろいろな努力が必要だったでしょう。コンテンツも同じように、頑張って調べてようやく用意していたものが、当たり前に揃うようになるのではないかと思っていました。
情報が網羅されていても、決め手があるとは限らない
網羅性が満たされれば、次は分かりやすさです。どこを削るかも含めて、AIを使うようになるのではないかと考えていました。お客さんは、すべての情報を知りたいわけではありません。自分の問題を解決できて、信頼できて、押さえておきたいことが分かればいいわけです。
文章だけでなく、図版や動画で伝えられるようになれば、情報を理解する手間も減るかもしれません。ただ、「知りたいことが載っていて分かりやすい」と「ここに決めよう」は、同じではありません。
どこを見ても安心できそうで、情報も分かりやすい。でも、決め手に欠ける。選ぶための違いが見えなければ、「結局、値段かな」となってしまうのではないか。私はそう予測していました。
だからといって、コンテンツやWebサイト、その後の商談で工夫する意味がなくなるとは思いません。そこで大事になるのが、自分たちしか知らない、お客さんに響く情報です。
自分たちしか知らない情報を、鮮度を保って集め続ける
ファーストパーティーデータというと固く聞こえますが、私がお伝えしたいのは、自分たちしか知らない情報を集め、保持し、常に新しい状態にしておける仕組みを持つことです。
コンテンツを作り込んでいる会社では、すでに「知りたいことは、探せばそこにある」という状態になっていました。それでも響かないことがあります。外の人に書いてもらった内容が響かなかったり、情報が多すぎて、お客さんが読むのを面倒に感じたりするんですね。
当時の私は、広く公開されている情報をもとにAIで文章を作るだけでは、どこも金太郎飴のようになっていくのではないかと感じていました。誰にでも通じる、破綻しない内容にはなっても、それだけでは深く入っていきにくいという感覚です。
でも、お客さんに聞いてみると、ネット上の情報を調べていても出会わなかった話が出てきます。「こういうところで決めるのか」「この切り口はなかったな」という情報ですね。お客さん自身も、情報が揃っている中で、次は何を基準に選ぶかを変えているはずです。
お客さんが新しく見つけた判断軸を、直接聞く
売り手がどこも同じようなことを言っていると、お客さんは「みんな同じだけれど、ここが違うな」と、自分で違いを探し始めます。
私は、ブルーオーシャン戦略の戦略キャンバスの話も思い浮かべていました。各社が同じ要素で競っていて違いが見えないなら、別の判断軸で選べるようにする、という考え方です。売り手が提示しなくても、買い手の側が新しい軸を探すことはあると思うんですね。
お客さんが何を基準に選び始めたのかを早く知り、その基準に自分たちはどう応えているかを示せるか。これはとても大事だと思います。
そのためには、お客さんの声を、できるだけ早く受け取れる業務の流れが必要です。直接話を聞くこともそうですし、仕事が終わった後のアンケートで何を聞くか、その後どんなイベントに招待して、継続して利用してくださる方から話を聞くか、といったこともあります。
私はこれを、ファーストパーティーデータを取り続ける仕組みと呼んでいます。一度聞いて終わりではなく、お客さんの変化を受け取れるようにしておく、ということです。
表に出ない商談や資料に、違いが表れる
2023年の時点でも、ホームページを見る限りでは他社とあまり違わないのに、その後の商談に進むと、話や資料の具体性が全然違う、という傾向を感じていました。
送られてくるステップメールなど、少し閉じた場や、完全に閉じた場で出てくる内容に違いがあるんです。提案も、ただ目新しいだけではなく、「確かに、こういう基準で考えたらいいのかもしれない」と思える切り口が出てきます。
自分が選ぶための判断材料を示してもらえると、「違うところは違うんだな」と感じるわけです。こういう違いは、ツールで表の情報を調べるだけでは分かりません。
当時の私は、そうした新しい判断軸をAIが出せるようになるのは、ネット上にも十分な情報が出回った後ではないかと考えていました。その前にお客さんから直接聞いて、提案へ反映できるか。その差は大きいのではないかと思ったんですね。
ジャパネットの「同じコースを繰り返す」取り組みから考えたこと
ここで、ジャパネットのクルーズ事業の話です。私は2023年7月6日のメールマガジンで、当時読んだ記事をもとに、この事業を取り上げました。
ジャパネットというと、テレビなどを使って、型番のある商品を魅力的に売る印象が強かったので、高単価でカスタマイズされたクルーズ事業をやっていると知ったときは、意外でした。
当時の記事で印象に残ったのが、5回クルーズを運航する際に、同じコースを回るという話です。私なら、とっさに「5回とも違う場所やコースを試して、一番反応がよいものを選ぶのかな」と考えてしまったんですよ。
でも、同じコースを繰り返せば、毎回お客さんの声が集まります。指摘されたところを直し、また次の回で確かめる。お客さんの声を繰り返し集めて、そのコースの品質を上げていく取り組みとして、私は受け止めました。
もちろん、そのコースに需要があるという見込みがあって、五つの候補から選ぶ必要がないことも、大前提としてあるのだと思います。その条件も含めて、ファーストパーティーデータを集めるという観点で、とても強いやり方だと感じたんです。
同じ見た目のサービスでも、判断の理由まではまねできない
やってみないと分からないことが多い仕事では、「うまくいったのはなぜか」「うまくいかなかったのはなぜか」「それなら次はこうしてみよう」を繰り返せます。同じコースを回る他社があっても、お客さんへの理解には違いが出るはずです。
なぜ、ここでこの出入りの仕方にしているのか。なぜ、このお店に行くのか。そうした判断に、現場で集めたお客さんの情報が使われているなら、表に見える行程を一度体験しただけでは、その裏にある判断まではまねしにくいと思います。
しかも、改善はその間も続いていく。何がよかった、悪かったという情報がすべて表に出ているわけではありませんから、強いなと感じました。
私がクルーズ事業の相談を受けたとして、本当に同じことを提案しただろうかと考えると、自信がないんですね。もっと手前の最適化を考えて、別のことをしてしまいそうです。自分ならどう考えるかという意味でも、印象に残る事例でした。
フェアやイベントでも、何がよかったか分かる変え方をする
これはクルーズ事業だけの話ではありません。フェアやイベントでも、毎回まったく違うやり方にしたり、一部を変えるのではなく、そもそも全体をがらっと変えてしまったりすることがありますよね。
長い期間続けて何かを作っていこうとするなら、何がよくて、何が悪かったか分かるように違いを作り、お客さんの情報を集めていく必要があると思います。
毎回新しいことをするだけでなく、そこで得た声を次の回へつなげる。ジャパネットの事例から私が考えたのは、そういう業務の流れを持てるかということでした。
AIでコンテンツを作りやすくなったら、「うちの方が網羅している」「うちの方が分かりやすい」という優位性は小さくなるかもしれません。私は当時、少し悲観的なくらいに考えて、次にどう選んでもらうかを見ておいた方がいいと思っていました。
そこで残したいのが、自分たちだけが持つ、お客さんからの新しい情報です。それを業務の中で自然に集めて、日々のサービスや提案を改善する。その仕組みを持っていることが、お客さんに選ばれ続けるために大事になるのではないかと考えています。
関連コンテンツ
集めた情報から相手への理解を深めるときは、Podcast 第251回:相手に寄り添う提案やコンテンツを作る2つのポイントも参考にしてください。
新しい商品を買ってもらうまでの取り組みは、Podcast[2023/04/14]:Webで新商品を売るときに考えておきたいことでお話ししています。
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