第486回: Webマーケティングの見せ方だけでは売れない。商品・サービスとお客さんに戻る
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、2023年のセミナーでお話しした、お客さんの変化とWebマーケティングの考え方についてお伝えします。
セミナーでは「ポストコロナ」としましたが、コロナは、もともと起きていた変化を加速させたのだと考えています。それまでの10年、20年と同じ考え方では、もう売れないのではないか。一つのテーマとしてお伝えしたのが、Webで売るのではなく、Webも使って売るということです。
見せ方のテクニックに頼るより、まず商品やサービス、そしてお客さんを理解することに戻っていただきたいんですね。ここからは、私がWebサイト制作やコンサルティングをしてきた中での記憶や、肌感覚も交えてお話しします。
売り手だけが情報を持っている時代ではなくなった
セミナーではしなかった話ですが、今回の変化は、2000年代に起きた売り手と買い手の関係の変化の、第2弾のように感じています。
最初に進んだのは、「情報の非対称性の解消」です。専門家と一般の人では、知っている情報が違う。その情報格差が、Webの力で縮まっていったということです。
懐かしのWeb 2.0といわれた頃から、お客さん側も簡単に情報を発信できるようになりました。SNSも広がり、企業の中の人が業界の事情を書いてくれるようにもなった。結果として、売り手と買い手の情報格差が小さくなり、営業活動も変わっていったと思います。
例えば、オフィスに「複合機を入れませんか」と飛び込み営業が来る場面です。以前は、普通の方が複合機の情報を日々持っているわけではありませんでした。メーカーからカタログを郵送してもらい、複数のカタログを比べるか、知り合いにいいところを教えてもらう。そのぐらいが限界だったんですね。
営業さんは豊富な資料を持っていますから、お客さんも「聞いてみないと分からないから、聞いてみようか」となる。それで飛び込み営業が成立していた面がありました。
でも、自分たちで検索して情報を得られるようになると、営業の話を聞く前に、「今は間に合っている」「この切り口なら考える必要はない」と判断できるようになります。昔ながらの営業には嫌な流れかもしれませんが、商業活動全体では公平性が上がったという意味で、よかったのではないでしょうか。
年代は少しあやふやですが、私がWebサイトを作ったりコンサルティングをしたりしていた記憶では、2000年代後半に加速し、2015年ぐらいまででかなり広がったという感覚です。
比較される前提で、自分たちの情報を出す必要があった
売り手側からすると、やることが増えたわけです。Webサイトでも、比較される前提でコンテンツを作る。営業資料で出していた顧客事例に代わるものとして、事例やお客様の声を載せる。お客さんによく聞かれることは、先にFAQにして不安をなくしておく。そういうことが必要になりました。
自分たちの情報をきちんと出して、初めてお客さんから問い合わせてもらえる。そんなことが求められる時代になり、対応した企業さんは反響を伸ばしていったんですね。
ただ、情報の出し方は本当にばらばらでした。いいのか悪いのか判断できない、ふわっとした言葉で強みを表現する会社もある。ユーザーリサーチや数字をもとに、分かりやすいキャッチコピーや明確な強みを打ち出す会社もある。そういう状況が続いていました。
加工を自分で体験すると、企業の見せ方にも疑いが生まれる
そこから、この話をした頃までの5年ほどで、もう一段変化があったと私は感じています。それまで企業の発信を、フラットか少し疑い気味ぐらいで見てくれていたお客さんが、「基本的には信じない」という方向に変わったぐらいに考えた方がいいのではないか、ということです。
前の変化では、誰でも情報を発信できるようになったことが大きかった。今回は、お客さん自身が、写真や動画を加工する体験をしたことが大きいと思っています。
例えばリモートワークで、動画の背景をぼかしたり、顔色の悪さをカバーしたりする。以前は難しいと思っていたことが、意外と簡単にできる。写真もそうですし、Zoomなどでアバターを出したり、見せている商品の色合いを変えたりすることもあります。
若い方には、LINEなどを通じて、もっと前から起きていた変化かもしれません。ただ、もう少し上の年代の方も、この数年でいろいろな加工を体験できたと思うんです。
テレビのようなテロップを編集ソフトで入れることも、結構簡単にできてしまいます。その悪い使われ方として、怪しい商品を、まるでテレビで紹介されたような画像にしてお客さんを釣ることも出てきました。
こうした加工を自分で体験すると、以前は「いい写真だな」「いいことを言っているな」と受け取っていた情報にも、「盛っているんじゃないの」「テクニックを使っているんじゃないの」と思うようになるんですね。
きれいな素材写真にも、「中の人を出せない理由があるのでは」「出たいと思う社員さんがいないのでは」と受け取られてしまうことがある。もちろん、もともと疑っていた方も、そんなに変わったとは感じない方もいるでしょう。私の肌感覚や周りから聞く意見では、企業の出す情報を見る目が、ずいぶん変わったと感じています。
営業のテクニックが、かえって警戒されることもある
皆さんも、ニュースやSNS、テレビを見るときに、「これ、本当かな」と、以前より疑うようになっていないでしょうか。昔はもう少し素直に見ていなかったかな、と振り返っていただきたいんです。
そういう前提で考えると、見せ方に頼ってきた企業さんは厳しくなっていると思います。「こう見せればいい」「これをやれば鉄板」という方法を使った時点で、マイナスから始まってしまうこともあるわけです。
営業心理学の話でも、例えば返報性の原理があります。何かしてあげると、相手もお返しをしたくなるというものです。でも、人によっては「うっとうしい」「気持ち悪い」で終わってしまう。比較的上の年代には通じても、これからの消費者には逆効果になるケースも増えていると感じています。
単純接触効果についても同じです。何度も接触すればいいと思っていても、「しつこい」「なぜそんなに来るのか」「何か意図があるのでは」と受け取られるかもしれません。「みんながやっていますよ」というバンドワゴン効果を狙った見せ方にも、裏の意図を考える人がいるでしょう。
こちらが売るために使っているテクニックを、お客さんも感じ取っている。そのつもりで考えた方がいいと思うんですね。
まず商品・サービスの品質と、相手に寄り添う力に戻る
営業心理学を説明する方も、大体「そもそも商品やサービスがよくなければ売れません。売れてもクレームになります」と付け加えます。私は、まさにここだと思っています。
2000年代、2010年代に、Webのテクニックである程度売れたことの方を、むしろ特別な時期だったと捉える。それまでのビジネスと同じように、まず商品、まずサービスであり、売るものの品質と相手に寄り添う力が大事な時代に戻ってきた、と考えていただくといいのではないでしょうか。
Webでどう見せるかを考えるときも、お客さんが自然に、不安を覚えずに来てくれるようにする。そして、相手のニーズに応えられることを示して、「ここならいいかな」と思ってもらう。そういう道のりを作れるかが大事になります。
いろいろな会社を延々と比較するのも、お客さんにとってはストレスです。「ここだったら、自分にも周りにも選んだ理由を説明できる」と思えるようにする。そのためには、売り方の考え方を結構変えなければいけないと思います。
次のテクニックを探す前に、今のお客さんを理解する
コロナが落ち着けば上向くと思っていたのに、思ったほど回復しない。商談になっても、その先の成約率が上がらない。そういう方は、お客さんの心理的な変化を捉えきれていない可能性があるのではないかと思います。
そのためにも、一度、今のお客さんを理解することにしっかり向き合う必要があります。当時のセミナーでは、2023年から2025年にかけて対応できれば、まだ追いついていない周りの会社より、うまく案件を取れるのではないかというお話もしました。
もちろん、これは私の推測や、過去の変化を考えるとこうではないかという話です。これから考えるときの参考として捉えていただければと思います。
「これからどんなテクニックが必要か」ではなく、「お客さんはどう変わったのか。だとしたら何を変えるべきか」から考える。そのように、スタート地点を変えていただくといいのではないでしょうか。
関連コンテンツ
お客様がどこまで比較しているのかを考えるときは、Podcast 第487回:マキシマイザーとサティスファイサーの考え方も参考にしてください。
価格や利用条件を伝える順番については、Podcast 第583回:良さを伝える前に、購入条件を確かめられるようにするで扱っています。
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