第322回:高級食パンはなぜ売れなくなったのか?令和時代の露出を考える
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。
このPodcast/書き起こしで得られること(要点)
- 高級食パンの失速を、単なる流行終息ではなく露出設計の問題として見る視点
- SNSで話題になることと、商売としてうまくいくことが別である理由
- 自社の商品を誰にどこまで見せるべきかを考えるための基本線
高級食パンがなぜ急速に勢いを失ったのか。この問いに対して、単に「名前が悪目立ちした」「主食に高価格は合わない」と片づけるだけでは、Web活用の教訓としてはもったいないと感じます。今回の話で重要なのは、露出のさせ方と、インターネット上で評価される条件が、商品特性とずれていたのではないかという視点です。
話題になることは、つい良いことのように見えます。ですが、誰に届くかをコントロールしにくいネットでは、露出が増えるほど誤解や反発も増えます。高級食パンの動きは、その怖さをかなりわかりやすく示していました。
SNSで盛り上がっても、世の中全体に広がっているとは限らない
まず押さえたいのは、SNSでバズることと、世の中全体に浸透することは同じではないという点です。Twitter で盛り上がっている、まとめサイトで話題になっている、テレビが拾っている。その流れを見ると、つい「みんな知っている」と思いがちです。
ですが実際には、そこで反応しているのは一部です。しかも、自社の商圏と関係のない人にも大量に届いてしまうんですよね。全国区で戦う企業ならまだしも、多くの中小企業や店舗商売にとって、商圏外の人に広く知られることは、利益よりもリスクのほうが大きくなりがちです。
この時点で、露出の評価軸を変える必要があります。たくさん見られたかではなく、来てほしい人に届いたかで考えるべきです。
食べ物はネットと相性が悪い
高級食パンの例がさらに難しかったのは、商品が食べ物だったことです。味、香り、食感は、インターネット越しには伝わりません。スペックで比較しやすい商品なら、数字や機能である程度は議論できます。ですが食べ物は、そもそも主観の差が大きく、しかもネットでは決め手が伝わりにくい。
そうなると、見た目や雰囲気、値段、ネーミングのような周辺要素ばかりが話題になります。しかも高級食パンの価格帯は、激安でも超高級でもない中間の位置にありました。この中途半端な高級感は、もっとも文句が出やすい帯でもあります。高いのに絶対的な贅沢品ではなく、安いから許されるわけでもない。だから評価が割れやすいのです。
つまり、ネット上で好意的な共感が広がる条件と、商品自体の強みがうまく噛み合っていなかった可能性があります。
作られたブームへの警戒感が強くなっている
もう一つ大きいのは、今の受け手が「作られた露出」に敏感だということです。加工、演出、盛った見せ方。そうしたことを、今は一般の人も日常的に体験しています。自分でも簡単に印象を変えられるからこそ、逆に他人の演出にも気づきやすくなっています。
その結果、仕掛けられたブームや持ち上げられた人気に対して、「本当にそうなのか」という疑いの目が向きやすくなりました。高級食パンは、名前の付け方も含めて、まさにそこに引っかかりやすい見せ方だったのだと思います。話題化のための演出が、商品理解より先に立ってしまうと、受け手は冷めやすくなります。
良い意味での露出を狙ったつもりでも、結果として「作られた感じ」が先に立ってしまえば、長続きしません。
むやみに広く見せないほうがいい
ここから導ける実際の現場上の示唆はかなりす。自社の商品やサービスは、わかってくれる人に届くように見せるべきで、関係の薄い層までむやみに広げないほうがいいということです。
インターネットを使うと、露出を最大化したくなります。遠くからも人が来て、大きく売上が伸びる絵を想像しやすいからです。ですが実際には、広く知られるほど、誤解も増え、商圏外の雑音も増え、説明コストも増えます。来てほしい人にきちんと価値が伝わる導線を作るほうが、ずっと安定します。
採用でも紹介でも同じですが、近い圏内で理解のある人に届く設計のほうが、結果は良くなりやすいものです。まずはそこを丁寧に作るべきです。
露出は広げる順番がある
もちろん、永遠に狭く閉じればいいという話ではありません。誤解を受けた相手にも説明できる窓口や体制が整い、少しずれた人が来ても理解してもらえる状態になったら、露出を広げていく余地はあります。
ただ、その前段階で大きく出るのは危険です。商品特性、伝わりにくさ、価格帯、受け手の反応、このあたりを踏まえて、どこまで見せるかを決める。高級食パンの例は、その順番を飛ばしたときの怖さを教えてくれるんです。
まとめ:露出は最大化より適正化
高級食パンの失速は、単にブームが去ったという話ではなく、露出のあり方と商品特性の噛み合わせを考える材料として見る価値があります。SNSで盛り上がることは、商売の成功を保証しません。とくに食べ物のようにネットで本質が伝わりにくい商品では、そのズレが大きく出ます。
だからこそ、露出は大きくすればいいのではなく、誰に、どこまで、どう伝えるかで設計する必要があります。自社を理解してくれる相手に正しく届くことを優先し、その先に少しずつ広げる。この順番を外さないことが、今の時代の現実的なやり方です。
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